勝率ゼロパーセント
俺は空高く飛び上がったニコニコおじさんを地表から見つめる。空には黄金色の太陽が昇っている。青空を埋め尽くすほどの光が、惑星を抱きしめる。
空から降り注ぐ光の粒が瞳に入って、少しだけ目が潤んだ。
「俺は空中を駆け上がる」
俺はパワーワードを使い、何も存在しない空中に足をかけて、空に向かって走った。
まっすぐと上に向かって、走っていく。空気の層をいくつも潜り、貫き、弾丸のように空に向かって突き進む。
『バトルルーレットスタート!』
無機質なアナウンスが街を飾る。俺は、水の剣を構え、
『ピロリロリロリロピピピピピ! ピーン! 攻撃力小』
弱い攻撃を放つ。
「何をやっても無駄じゃ! お主は絶対に勝てない」
おじさんは、ガードの姿勢をとる。
『ピロリロリロリロピピピピピ! ピーン! 防御力大』
俺の羽毛のような斬撃がおじさんの肌を撫でる。おじさんは全てのダメージを無効化した。弱いノックバックだけがおじさんを襲う。おじさんはさらに上空に飛ばされる。
地表では、アルトリウスが俺のことを見上げて、
「行けっ!」
「俺は諦めない!」
俺はおじさんを追撃すべく、更に空に向かって走る。地表からは数十メートルほど。
俺は再び剣を構えて、
『ピロリロリロリロピピピピピ! ピーン! 攻撃力中』
上空にいるおじさんに、中くらいの攻撃を放つ。
おじさんは、ガードの姿勢をとる。
『ピロリロリロリロピピピピピ! ピーン! 防御力大』
再びダメージは無効化され、おじさんは上空に弾かれる。
「そんな攻撃何度やってもわしにダメージはない!」
地表では、アリシアが俺のことを見上げて、
「諦めないで! あなたなら勝てる」
「俺は勝つまで攻撃をやめない!」
俺は更に空を駆け上がる。空を蹴って、鳥のように飛翔する。頬を切る風は、刃物のように鋭い。俺は再び剣を構えて、
『ピロリロリロリロピピピピピ! ピーン! 攻撃力大』
強力な攻撃を放つ。
おじさんは、ガードの姿勢をとる。
『ピロリロリロリロピピピピピ! ピーン! 防御力大』
再びダメージは無効化され、おじさんは上空に弾かれる。
「どんな出目の組み合わせでもわしの勝ちじゃ! こうして防御し続ければ、ダイヤモンドリキッドの効果で全てのダメージは完全無効じゃ!」
地表では、アリシアとアルトリウスが、
「「勝てっ!」」




