バトルルーレットスタート!
「わしの勝ちのようじゃな!」
おじさんの出目は当然攻撃力大。
そして、おじさんの攻撃が、“俺を庇ったアルトリウスの躯体”を切り裂いた。アルは鈍い音とともに吹き飛ばされた。
「アルっ!」
血しぶきが空を染める。石畳にバケツをひっくり返したような血の池が広がる。
アルは地面に仰向けになり、こちらを見る。
「諦めるな」
そして、おじさんはさらに俺に向かって追撃をする。
「仲間が庇ったのか? 馬鹿な奴らめ。皆殺しじゃ!」
「頼む! ルーレットよ! 今度こそいい目が出てくれ! ルーレットストップ!」
『ピロリロリロリロピピピピピ! ピーン! 攻撃力小』
現実は残酷だ。
「今度こそ、終わりじゃ! 大人しく死ねっ!」
おじさんの出目は当然攻撃力大。
そして、おじさんの攻撃が、“俺を庇ったアリシアの躯体”を切り裂いた。アリシアは吹っ飛ばされ、血を撒き散らしながら転がった。地面には汚らしい轍ができた。
「アリシアっ!」
夥しいほどの出血が、アリシアの服を濡らした。攻撃力大をもろに食らったんだ。
アリシアは虫の息で、
「諦めないで」
そして、おじさんはさらに俺に向かって攻撃を放つ。
「これでもう完全に一人じゃな。さあ。いい加減死ね!」
俺は腹を括った。
『バトルルーレットスタート!』
運命の歯車が回転する。無機質な音が響く。運命はいつだって残酷だ。野蛮で残虐で無慈悲で残忍で厳酷(げんこく 酷いこと)で非道で陰惨で猛悪(もうあく 人を苦しめるような)だ。
運を味方につけることなんてできない。弱くて虫けらのような人間に運をコントロールすることなど不可能だ。絶対に無理だ。
途中で諦めてしまう人間が口を揃えて言う台詞、それは
『運がなかった』
そして多くの場合それは事実だ。全ての人間に運はない。人間の人生で“都合の悪いことが起きること”を不幸というなら、人生なんて不幸の塊だ。ただただ不幸が続く道だ。
いつも人間は運のせいにする。人の人生の九十九パーセントは運で決まる。人間にできることは最後の一パーセントだけ。
諦めないこと、それが弱くて脆い人間に許された最後のあがき。ゴミ溜めのような世界に生まれた虫けらの最後の抵抗。
諦めない人間が勝つわけではない。
諦めないことで勝利の道が開けるわけではない。
諦めなければ勝てると言う保証ももちろんない。
諦めなければ夢が叶うなんてただの妄想だ。
だけど、夢を叶えた人たちの中に、途中で諦めた人間は一人もいない。
運を味方にしようとしても無駄だ。必ず不幸があなたのことを襲うから。人間が運で勝つのは絶対に無理だ。
だから人は諦めない。成功するまで諦めなければ必ず成功するのだから。




