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この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜  作者: 大和田大和
第三巻 公平の世界
87/260

作為

ドゴオオオオオオオオン。


透明な空に爆音が響きわたる。空には、水の礫が打ち上がり、日差しを吸収しながら街に降り注ぐ。


巨大な噴水が爆発したみたいだ。俺は衝撃と共に、家から空中に投げ出された。攻撃力大は、攻撃の反動も大きいのだ。木っ端微塵になった家のカケラの中を飛ぶ。


俺は路地に降り立つと、イかれた殺人鬼の方を見た。そいつの顔からはもう正気すら消えていた。


木造の家の肉片が、雨のように路地に降る。コツコツ、パラパラと不規則なメロディーが地面を揺らす。石畳の絨毯は、あっという間に汚れてしまった。


石と木がぶつかり、石と石がぶつかり合う。そして、水を打ったように街は静かになった。これは、戦いの前の静けさなのだろう。


俺とニコニコおじさんは、家の外の路地で互いの顔を見つめ合う。


しばらく静寂を楽しんだ後に、

「いかにもわしの家庭では虐待が日常的に起こっている」

「じゃあ。自分が殺人鬼だって認めるんだな?」


「そうだ。死ねっ!」

ニコニコおじさんは体に仕込んでいた暗殺用の短剣で、連続攻撃をしかけてきた。この国での戦闘では出目が全て。


おお振りの攻撃を一度打ち込むよりも、数打って攻撃力大を引き当てるほうが得策だ。

流石は、この国の殺人鬼だ。戦い方がうまい。



俺は、おじさんの攻撃を水の剣で弾く。マシンガンのように乱射される突き攻撃は、烈火のように激しい。まるで、おじさんの手が何百本もあるかのようだ。


激しい攻撃は、乱れ、舞い、踊り、狂う。攻撃の軌跡は、激しく咲き誇る花束のよう。


色のない花弁は、俺の体を幾度も舐めた。

俺は後ろに飛びつつ、応戦する。石畳の路地を水切り石のように飛んでいく。おじさんは明確な殺意を持って俺を追い詰める。地べたを這う蛇のように激しくうねりながら滑ってくる。



攻撃のたびにルーレットは無慈悲に回る。ルーレットの出目は、おじさんに味方していた。完全に向こうのペースだ。


俺の出目は、

『攻撃力小』、『中』、『小』、『小』、『小』、『小』、『小』、『中』、『小』、『大』、『中』、『小』、『小』

(『中』や『小』は『攻撃力中』『攻撃力小』ということです。読みにくいので省略しました)


ニコニコおじさんの出目は、

『攻撃力大』、『大』、『大』、『大』、『大』、『大』、『大』、『大』、『大』、『防御力大』、『大』、『大』、『大』



十三回の斬り合いは一方的だった。ルーレット云々を抜きにした戦闘力は俺の方が格段に上。おじさんと同等以上の出目が出れば俺が勝つはずだ。


普通にやれば、確率的にも勝率的にも実力的にも俺が勝つ。


なのになんだこの出目は? チートでもしているのか? 明らかに作為的な何かが行われている。


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