ニコニコおじさんニッコニコ
[翌朝]
ニコニコおじさんの家の一階のソファーに俺、アル、アリシアが座っている。
「何っ? 殺人鬼が殺されたっ?」
「ああ。すまないケン殿。刑務所内の人間は看守も囚人も全滅だったらしいのじゃ。きっと殺人鬼に恨みを持った誰かの犯行じゃろう」
「相手が殺人鬼だからって、そんな無差別に殺すことあるか? 看守は関係ないだろ!」
俺は怒りに任せてテーブルを右手で叩いた。
「ケン、落ち着け」
「それで、ニコニコおじさん。犯人の検討はついているの?」
「手がかりなしじゃ。証拠も手がかりも目撃証言も何一つないらしいのじゃ」
「くそっっっっっ!」
俺は右手でテーブルを叩いた。大きな音が部屋の中を走る。
その音にびっくりした、赤ちゃんが、
「おぎゃあああああああ」
ニコニコ奥さんは、赤ちゃんが泣き止むようにあやし始めた。
「おー。泣かないで。よしよし」
「あっ! ごめんなさい」
「ケン殿への依頼は、例の殺人鬼を逮捕するところまで、あとはわしら公平の国の民でなんとかする。今回は本当にありがとうございますじゃ」
ニコニコおじさんは、ニッコニコの笑顔を顔に浮かべる。だが、それがなぜか薄っぺらいように感じた。
「さ、そろそろわしらも今日の家が割り当てられますじゃ。そろそろお暇願いますのじゃ」
「煮え切らないけど、どうすることもできないな。あまり力になれなくてごめんなさい」
「いえいえ。殺人鬼を止めてくれただけでも感謝です」
そして、俺たちはニコニコおじさんの家を去った。