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この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜  作者: 大和田大和
第三巻 公平の世界
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公平イコール不公平


第三章 公平イコール不公平


俺はアルとニコニコおじさんに、この国に関して詳しく聞くことにした。


アリシアは難しい話は嫌だと言って、隅っこでおじさんの赤ちゃんと遊んでいる。

「不公平によって公平になる? どういうことだ?」

「私から説明しよう」

と、アル。


「私たちがこの国に入った時、非常に不公平な入場料のルーレットがあっただろ?」

「あー。あの理不尽に百万取られたアレか?」


「アレは、この国に入場する全ての人間に課せられるものだ。そして、入場料は完全にランダム」

「うん。そんな感じだったな。でもそれだとすごく不公平なルールにしか思えないけど」


「だがよく考えてみてくれ。この国では水も宿も食事も全てがクジ引きだった。だけど、クジ引きはアレだけじゃないんだ」

「フォフォフォ。このお嬢さんのいう通りじゃ。この国では、給料、仕事内容、住む家、筋力などが毎朝ランダムに決まるのじゃ」


「どういうことだ?」


「つまり、この国では、身の回りの何もかもが全てクジで決まるということだ! 給料が一日一万マニーの警備員の日もあれば、給料が一日二百万の医者の日もある。運によって全てが決まるということだ!」


「は? そんなんで成り立つのか?」

「成り立つのぅ。現にこの国はこうして存在できておる」

「でも、なんで全部ランダムなんだ? 得意な仕事をした方がいいだろ」


「それだと、不公平が起きる。才能のある人間や、親が金持ちの人間しか成功できない社会になってしまうのじゃよ。この国では、意図的に全ての人間が活躍できる機会を生み出しておるのじゃ」


「そういうことか。どんなに貧乏な家に生まれても、待ち続けていれば必ず美味しい目にあう(医者になれたり、いい宿に泊まれたり)。だから、平等ってことなんだな」


「その通りだ。この公平の国では、常に“明日はクジ引きに当たるかもしれない”という希望があり続ける。全ての人に平等に、クジを引くチャンスがあるのだ」

と、アル。


俺は自分がクジを引いた時の興奮を思い出した。

「この国はそうやって生きてきたのじゃよ。毎日毎日クジを引き続ける。数日、数ヶ月不運が続いても、いずれは必ずいい目にある。だから自殺率は完全なゼロパーセント、うつ病になる可能性もほとんどないのじゃ」


「毎日違う仕事をやるから、上司も職場環境も変わり続ける。嫌な上司を引いても、たった一日だけ我慢すればいい。なるほど、それなら仕事も続けやすそうだな」

「そういうことだ。私たちがこの国のいろんな店に行った時、みんな“私が今日の店主だ”と言っていただろう。そういうことだ」


「なるほどな。どんなに貧乏人でもクジなら勝機がある。毎日レストランでクジを引き続ければ、いずれは一生かかっても食えないようなものが食べられる」

「私たちが泊まった竜王の居室もそうだ。一泊一千万するが、ずっとクジを引き続けていればいずれは泊まれるんだ」


「へー。面白いこと考える人もいるんだな。確かにそう考えれば、不公平(クジ引き)によって公平が生み出されていると言えるな。でもどういう仕組みでクジ引きをしているんだ? いつも独りでにクジ引きがスタートするんだが?」

クジ引きをするときは、いつもどこからともなく『ルーレットスタート!』の合図が聞こえ、『ピロリロリロリロピピピピピ! ピーン!』という音が聞こえてくる。そして、不思議なことに、そのクジには魔法のように強制力があって、しっかりと景品がもらえる。



「あれはこの国の王様のパワーワード能力だ」



「この国全体に、一人の人間がパワーワードを使ったのか?」

「そうじゃ、確か、“不公平によって公平な国を作りたい”がそのワードじゃったかの」

「ケン、お前は確か一度、パワーワードの限界を超えていたな?」


「ああ。もうこれ以上強くなれないと言われた後、さらに能力が上昇したことがある」



「パワーワードには、現時点で四段階のレベルがあるんだ。


一段階目は、通常のパワーワード使い。例えばアリシアがそうだ。

二段階目は、一度限界を超えたパワーワード使い。例えばケンがそうだ。

三段階目は、二度限界を超えたパワーワード使い。

四段階目は、三度限界を超えたパワーワード使いだ。例えば、この国の王様がそうだ」



「限界を何度も超えるってのも変な話だな」

「まあ、パワーワードっていうのはそういうものだ。もうこれ以上強くなれない状態を何度も超える。矛盾を孕んだルールもパワーワードらしいだろ」


「んで、その王様がめちゃくちゃ強くて、この国全体にパワーワードを使ったってわけだな」

「そういうことじゃ。さらにわかりやすくするためにも一度ここで、この国の戦闘を行ってみるとしよう」

そういえば、この国に入ってから特に小競り合いなどは起きなかったな。


「ケン殿、わしの右手に向かってパンチしてくだされ」


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