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この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜  作者: 大和田大和
第三巻 公平の世界
59/260

ゴリラクイズ!


「ねー! 今度は私がクジ引きたい!」

と、アリシア。


「わかった! 一等以外を引いたらぶん殴るからな!」

「なんでよっ!」


そして、アリシアがクジを引きに行った。


結果は、一等のゴリラの丸焼きだった。


お値段、おひとり様千マニー。

「まさか本当に当たるなんてな」

「きっと、昨日飲んだ液状宝石ダイヤモンドリキッドのおかげだろう」


「ねえねえ。ゴリラって食べられるの?」

アリシアを無視して、


「あの水飲むと、本当に人間の運気が上がるんだな」

「何回も言っただろう! あれは普通に買うと百万マニーはするんだぞ!」


「ねえねえ。ゴリラってどんな味がするのかしら?」

アリシアを無視して、


「はあっ? まじで? そんなたけーのかよ! 俺の借金が返せたじゃないか」

「でもその代わり、竜王の居室に泊まれたんだし、いいだろう。あそこだって普通に泊まると一泊一千万マニーはするんだぞ!」


「ねえねえ。ゴリラって丸焼きにするもんなの?」

アリシアを無視して、


「一千万っ? そんだけありゃ当分食事に困らないじゃんか! くそー。あんなにいい部屋だからそこそこ値が張るだろうなと思っていたが、そんなに高かったとは」

俺はわかりやすく頭を抱えた。

「ま、でもこの公平な国では、クジの景品を売買することは許されていないからな。どのみち換金はできない」


「ねえねえ。ゴリラの学名はゴリラ・ゴリラ・ゴリラなのよ。知っていた?」

アリシアを無視して、


「あ、そなの。ならいいか」

換金できないと知って、急にどうでもよくなった。っていうかさっきからおばか(アリシア)がうるさい。ってかなんで頑なに無視してんのに、頑なに話しかけようとするんだ?


「ねえってば! さっきからなんで無視するのよ! ゴリラの生態とその性質について詳しく教えてよっ!」

「なんでだよっ? つかお前はさっきからなんの話をしているの? なんでそんなにゴリラに対して知識欲旺盛なの?」

また一人で話をヒートアップさせたんだな。さすがガチぼっち経験者だ。


「アリシア。少し落ち着いてくれ。私もゴリラについて知りたいが、ケンはゴリラ博士じゃない」

ゴリラ博士って何?

「なんでよー? ゴリラのこと教えてくれるまで、私帰らないからね! ゴリラについて教えて!」

「無理だよ!」

と、俺が言った。


「本当っ? 今、『いいよ』って言ったの? ってことは、本当にゴリラについて教えてくれるのね! 嬉しい! じゃあ第一問!」

無理つっただろ! 一番最初にアリシアに会った時を思い出す。なぜか俺の言ったことと真逆の反応をするアリシア。こいつバカのふりして嫌がらせしているんじゃないか?



「ドゥルるるるるるるー。デデンっ! 第一問! 霊長類に分類される類人猿の群れでは通称、単雄複雌群、複雄単雌郡、単雄単雌郡などに分類することが可能だが、マウンテンゴリラの場合は、どの分類の群れを形成する可能性が最も有力だとされるか答えよ」

「そんな問題答えられるわけ、」

アルが言い終わる前に、俺は口を開いた。

「答えは、複雄複雌郡だ。具体例を列挙して、その中に回答がなければ、見誤るとでも思ったのか? こんな簡単な問題答えられないわけないだろ」



「な! ケン! お前なんでそんなこと知っているんだ? というかアリシアもアリシアでなんだその問題は?」

アルは目ん玉をひんむいて驚いている。


「やっるわねー!じゃー! デデンっ! 第二問! 昨年、研究機関がメスのニシローランドゴリラのゲノム塩基配列を解読することに成功した。そして、そのことにより様々なことが判明するに至った。具体的には、どのようなことが明らかになったか答えよ」

「アリシア。お前、本当はゴリラについてものすごく詳しいんじゃないか? そんなこと一般人がわかるわけ、」

アルが言い切る前に、俺は口を開いた。

「ヒト遺伝子のおよそ十五パーセントがゴリラの対応遺伝子に類似していたことだろ。それにより、ホモ・サピエンス、チンパンジー、ゴリラ、ボノボなどがどういう風に分岐して系統樹を作ったかがわかったんだ。研究によって遺伝子流動もかなり起こっていた可能性も浮上してきたらしいぞ」


「おおい。なんでそなことがわかるん、」

アルが言い切る前に、アリシアが口を開いた。

「むむー! やるじゃないの! じゃー第三問! ゴリラの身長と体重を答えよ。なお、種類別にそれぞれのものを回答せよ」

「ニシローランドゴリラは身長百八十センチ。体重およそ二百キロ。クロスリバーゴリラが百七十センチの百四十キロだ。マウンテンゴリラは百九十センチ、二百二十キロだ」

俺はスラスラとゴリラの知識を並べた。なんだ簡単な問題ばかりじゃないか。



「わおっ! やるわね! なら第四問! マウンテンゴリラとクロスリバーゴリラと東ローランドゴリラの学術名を全て答えよ。なお、回答の際には正式名称を用いること」

「ゴリラゴリラベリンゲイ、ゴリラゴリラデリー、ゴリラベリンゲイグラウアーだ」



「第五問。ゴリラ特有のドラミングは、」

アリシアが言い切る前に

「ドラミングは元来、威嚇のための行動だと考えられていたが、最近の研究結果によって判明した新事実とは何か答えろ、っていう問題だろ? ドラミングの本当の目的は、“戦いをやめる交渉”、“自分の位置を仲間に知らせる”、“リラックス効果”の以上の三つだ」

「おい、なんで問題文までわかるんだ? おかしいだろ。お前たち打ち合わせでもしたのか?」

と、戸惑いを顔に貼り付けるアル。



「第六問.ドラミ、」

「ドラミングが聞こえる距離は、およそ二千メートルつまり二キロだ。ゴリラのドラミングが聞こえてきても、まだそんなに遠くないかもしれないから、ゆっくりとその場から離れたほうがいいだろう」


「第七問.ゴ」

「ゴリラという名前の語源は、ギリシャ語の毛深い部族を意味するゴリライだ」


「だい」

「第八問.ゴリラの生息数の減少の原因は何か? 答えは、人間による住処の破壊。異常気象などによる森林破壊。ブッシュミート(食べ物)の減少。ゴリラを捕獲しようとする人間という天敵などが挙げられる。

ここだけ聞くと、人間がゴリラを絶滅に追い込んでいることがわかるな? だが俺が言いたのはそこじゃないんだ。まずは、みんながゴリラに抱いている勘違いを是正したい。

ゴリラに対して、凶暴なイメージを持っている人が多いだろう。だがゴリラは、元来おとなしい生き物なんだ。ゴリラたちは、基本的には人間を怖がっている。さらに、ストレスや環境の変化ですぐに体調を壊してしまう。ゴリラを絶滅から救うためには、彼らの住処を確保し、不必要な捕獲、乱獲をしないことが第一歩だ。

だが、こんなニュースもある。レッドリストに載っていたマウンテンゴリラ学術名ゴリラゴリラベリンゲイは近絶滅種からワンランク下がり、絶滅危惧種にまで後退できたんだ。このことは、ゴリラたちの絶滅を防ぐ試みが順調に進んでいる証拠だろう。さらに」


しばらく後、

「第百二十五問。ゴリラの子供は背中の毛が黒くブラックバックと呼ばれるが、成人したゴリラの背中の毛色は黒でなくなる。このことはゴリラの年齢、成長具合を推論する上で非常に重要な手がかりになる。この“白い毛が背中に生えているオスのゴリラ”のことをなんと呼ぶか答えよ!」


俺はアリシアに問題を出した。アルは完全に絶句して頭を抱えている。


「わ、わからないわ」

アリシアは顔から生気が消えていた。俺にゴリラクイズで挑むからこうなるんだ。


「わからないのか? 正解は、シルバーバックだ。見事な白い毛は、ぜひ一度見るべきだ。きっとアリシアも圧倒されるはずだ!」


俺は続けて、

「じゃあ次の問題だ。第百二十六問。ゴリラの」



あたりには人だかりができていた。かれこれ一時間はゴリラクイズをしていただろうか。ちょっとした見世物のようになっていた。そして、


「以上だ。ゴリラの絶滅を防ぐためにはゴリラの不必要な乱獲を止めることだ。彼らの生態を理解して、真摯にこの問題と直面していこう! さ、そろそろ腹も減ったしゴリラの丸焼きでも食べるか!」

俺は目の前に用意されたゴリラの丸焼きに、手を合わせた。お腹はもうペッコペコだ。


「「「いっただっきまーす!」」」



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