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この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜  作者: 大和田大和
第三巻 公平の世界
52/260

公平な水屋

そこは、ぐるっと一周レンガで囲われている国だった。石造りの町並みは、簡素で平凡だが趣があり、俺の心を楽しませた。

だが、街の建物を見た瞬間、

「なあ。ここって公平の国なんだよな? これのどこが公平の国なんだ?」


そして、パーン! パパーン! パパパーン!

クラッカーのようなものが鳴らされた。

「「「「公平の国へいらっしゃーい!」」」」

出迎えてくれたのは、公平の国の住民だった。心地の良い歓迎は、胸の中にまで入り込んできた。


「うわっ! びっくりした。すごい歓迎されているな」

「きっと私のことを歓迎しているのね!」

「いらっしゃいませ! 三名さまですね!」

「ああ!」


「では、早速ですがルーレットいってみましょう!」

「何? ルーレット?」


そして、

『ルーレットぉースタートぉー!』

俺たちの頭上で、どこからともなく楽しげなアナウンスが流れた。


「なんだこれ?」

俺目の前、ちょうど頭の高さくらいの空中に、ルーレットのホログラムのようなものが浮かび上がる。

『ピロリロリロリロ』

ルーレットは徐に回転を始めた。早くて見にくいが、ルーレットの出目には、数字が書いてあるようだ。

『ピロリロリロリロ』

回転するルーレットの上で、目まぐるしく数字が踊る。


「ルーレット!」、「ルーレット!」、「ルーレット!」、「ルーレット!」

出迎えの街民たちは、楽しそうな掛け声を飛ばす。俺はどうして良いのかよくわからずに、ひたすらルーレットを見つめる。縦に回転するメリーゴーランドは、俺の瞳を釘付けにする。


『ピロリロリロリロ』

「ルーレット!」、「ルーレット!」、「ルーレット!」、「ルーレット!」

機械音と人間の声が不気味で楽しげな協奏曲になる。


「おい! 何をしている? 早く止めろ!」

「え? 止める? どうやって?」

「ストップだと言えばいい」


俺は空中に浮かぶルーレットめがけて、

「ルーレットストップ!」

すると、

『ピロリロ、リロ、リロ』

ルーレットは次第にその回転数を下げた。ゆっくりとした回転は、死にかけのコマのようだ。俺の瞳には次々と数字が映し出されていく。さっきまでは早すぎて見えなかったが、今なら見える!


数字の大半は、『十、百、千』だった。だがその中に一つ、一際目立つ文字で、『百万』と書いてあった。これが何を意味するのかわからないが、もし、単位がマニー(この世界のお金の単位です。一マニー一円だと考えてください)だったらすごく嬉しいことになる。


俺の胸の中に確信はなかった。だが、信じている。俺なら百万マニーもらえるはずだ!

ルーレットはさらに回転を緩める。ゆっくりと確実に停止へと向かっていく。

『リロ、リロ、リロ、リ、ロ』

そして、ついにその時は来た。

『ピピピピピ! ピーン!』


止まった出目は、

『百万』

「いやったー!」

俺は大はしゃぎした。やっ

た! お金ダイヤっほーい! 俺がこの世で一番大好きなのは、友情じゃない、お金だ! お金さえあれば人生は最高だぜ!

心の中を最悪な感情がのたうちまわる。大金が手に入った瞬間、あれだけ大事にしていたものが一気にどうでもよくなる。


お金への灰色の渇望が俺の胸骨から溢れて溢れちゃいそうだ。どんよりとした、液体が汁を床に垂らしながら、胸から這い出る。そっか。これが金欲なんだ。


金欲はそのまま、糸を引きながら俺の体にまとわりつく。俺はそれを拒まなかった。金欲にこの身を全て捧げる。皮膚の表面を、粘つくスライム状の欲望が登る。首筋を舐めて、背中を這い回る。頭のところまで来て、口の中に入ろうとしてくる。


そして、

「ざーんねーんでーしたー! ケン様の入場料は、最大の百万マニーになりまーす!」

と、街民の声。周囲で俺を出迎えてくれた人々は、俺を歓迎していたんじゃない。俺から搾り取ろうとしていたんだ。


周囲の人々は、俺のことを冷たい目で見つめる。人はなぜ、不幸な人を見ると、心の中に快感を感じてしまうのだろうか? この人たちは、今、最高に幸せそうな顔をしている。


「え? 入場料? 入場料のルーレットだったんですか?」

「「「「そうでーす!」」」」

そして、俺の体を支配していた、金欲の塊はどこかへ行った。やっぱり大事なのは金じゃない友情だ。もうそこだけはブレないように生きていこう。そうしよう。


「アルトリウス。お金かして」

「百万マニーを引き当てるやつなんて初めて見た。運が悪いなんてもんじゃないぞ!」

「どーしよー! 俺そんな金ないよー! っていうか、もう帰りたいんだけど! なんで国に入るだけでこんな金取られるんだよ!」


「仕方がないだろ! それがこの国のルールなんだ」

アルトリウスは俺に三十万マニー貸してくれた。

「アリシアー。金かしてくれ! 後でぜっっったいに返すから! ほんの少しでもいいんだ!」

「仕方がないわねー! 本当に少しだからね!」

アリシアは俺に五十六マニー貸してくれた。本当に少しだった。


俺は散々ごねた後、しぶしぶ百万マニーを支払った。というか払えなかったからツケになった。



「なんなんだよ! 外国旅行ってこんなクソなのかよ! もうすでに最悪な気分なんだけど! つーか心の中で、“全てが新鮮で、真新しい。瞳に映る全ての景色が輝いて見える”とか言っちゃったよ。恥ずかしー」

「心の中で言ったのなら、口に出さなければいいだろ。誰に聞かれているわけでもないだろうに」


「うーん。海外旅行はいいな。全てが新鮮で、真新しい。瞳に映る全ての景色が輝いて見える」

と、どや顔で俺の真似をするアリシア。


「何それ? 俺のまね? からかっているの? やめてくんない?」

「そろそろ恒例の食事にしたいのだが、どうだろうか?」

「そうね! 恒例の食事にしましょう! あと、宿もとりましょう!」

「そうだな! 恒例の食事の後は、宿でゆっくり休んで日頃の疲れをとって帰ろうか」

そして、俺たちは殺人鬼のことなど完全に忘れて、外国を堪能した。



公平の国の街並みは、イかれていた。空に向かって突き出る巨大な塔や、城みたいに大きい家がちらほらある。だが、街の大半の家屋は、オンボロだった。

ダンボールを組み合わせて作った家、トイレの中にある家、トランプで出来た家、コタツの家など、とても人が住んでいるとは思えないような家ばかりだった。


歪な街並みは、まるでギザギザに尖った平面のようだった。平らな地面に、凸凹に様々なものが乱立している。まるで統一感などなく、美しいとは言えない。


目の粗い紙やすりを巨大化させて、その上に住んでいるみたいだ。建物と建物の大きさや形に違いがありすぎる。


公平の国、公平の国と言われているから公平だと思っていた。だが、国に入るときの通行料然り、貧富の差然り、一体これのどこが公平だというのだろうか?


俺たちは街に並ぶ様々な店の前を通り過ぎた。ショーウィンドウに映る商品も、国と同じようにまばらだった。

「え? なんだこれ」

俺は、目の前のショーウィンドウを覗き込んだ。鏡のように光るガラスを目を凝らして見つめる。目を凝らしている自分の姿がはっきり見えた。そして、次第に中のものが網膜に映ってきた。

「これは、クジ?」

ショーウィンドウに並んでいたのは、クジの景品だった。


一等、液状宝石ダイヤモンドリキッド

二等、竜王の涙

三等、天然のスパークリングウォーター

四等、普通の水


「一回百マニーか」

「ケン引いてみなさいよ!」

と、アリシア。なんでこいつは毎回、俺に毒味させようとするんだ?


「これはこの国の水屋だ。“公平な水屋”という。水を買いたい人がここに来る」

「これクジ引き屋さんじゃないのか?」

「うーん。そうとも言えるな。まあ試しに入ってみるか」

俺たちは店内に入った。店内は、狭くて、窮屈で圧迫感があった。カウンターには、大きなガラポンがあって、退屈そうな店主が佇んでいる。


カビと埃の匂いが鼻をつく。空気中を漂う埃は、窓から差し込む光に当たってプリズムのように光を散らす。

「いらっしゃい! 俺が今日の店主だよん!」

俺“が”今日の店主? 彼の口ぶりからすると、店主がころころ変わっているのだろうか。

「ど、どうも。普通の水を買いたいんですけど」

「あ、あんた。普通の水が買いたくて、水屋に入るのか? バカ言っちゃいけねーよ! ガッハッハっはー」


なんだこの店主? うぜー。

「店主殿。申し訳ないが、ケンはこの国が初めてでな。この国のルールがまだよくわかっていないのだ。水クジを一回引かせてもらえないだろうか?」


「おー。なら観光客だな。ガッハッハー。坊主、それならそういう反応になっても無理はないな! ほれ! 一回百マニーだ!」


重たい音とともに、クジ引きのガラポンが目の前に置かれた。どこにでもある普通のクジ引きマシーン。手で回せば、中からクジが出てくるやつ。ようは普通のガラポンだ!


「これを回せばいいんだな?」


俺がクジ引きマシーンに触れた瞬間、

『ルーレットスタート!』

あのアナウンスが再び響く。クジ引きマシーンは激しく乱回転を始めた。

「な、なんだっ?」

「ほら! この国に入ってきたときにやったはずだろ! ガッハッハー」


ルーレットを止めろってことだな。俺はかっこよく手をかざし、

「ルーレットストップ!」

『ピロリロリロリロピピピピピ! ピーン!』

ルーレットは止まった。

「頼む! 今度こそ罰金は無しで!」


『おめでとうございます。一等の液状宝石ダイヤモンドリキッドが当たりました!』


「「な、なんだってー!」」

なんだかよくわからんが今度は、いいやつが当たったらしい。でもダイヤモンドなんたらがなんなのかわからないからイマイチピンとこない。


「坊主! 一発でダイヤモンドリキッドなんてお前さん神童か!」

店主は俺にそのダイヤモンドなんたらを手渡した。手に持ってみて、光に透かしたが、普通の水にしか見えない。


「ケン! やったな! これはすごい確率だぞ!」

なんでだろう? あんまり嬉しくないような。

「ケン! 偉いわ! すごいわ! 私にもちょっとだけ味見させてちょうだい。いいでしょ?」

なんか騙されているような。


「液状宝石ダイヤモンドリキッドってなに?」

「それはすごいんだぞー! 飲むとたちまちあなたの寿命が延長されて、お金持ちになって、幸運になって、女の子にモッテモテになってウッハウハになる魔法の水だ! ガッハッハー!」


一瞬だけ黙り込んで、

「ただのよくあるインチキ商品じゃねーかよ!」

俺は手にしたインチキ商品を高く掲げて、床に叩きつけようとした。


「待てー! 何をやっている大馬鹿! 本当に寿命が伸びるんだぞっ!」

血相を変えたアルが俺を止める。青い瞳が血走って、見開かれている。こいつこえーな。なんか瞳が青いから余計に血が目立つ。

「え? まじ?」


アルと店主は大きく頷く。俺は、蓋を開けて、水を一気に、

「いただきます」

すると、透明な水にしか見えないそれは、うねりながら喉を落ちていく。


「うおおー! この液体は、一見しただけでは普通の水にしか見えない! だけど! 喉を落ちていくこの感覚は、まるで濃厚な黄金を溶かして流し込んでいるような感覚だ! そして、胃袋の中では液状化した宝石が溜まっているかのような重量感と異物感! これは間違いなく、“液状宝石ダイヤモンドリキッド”だ! さらに体から湧き上がるこの感覚! これはまるで自分が神様にでもなったかのようだ! なんだこれ! 最高だ!」


「そ、そんなにすごいのかっ?」

「ちょっと! 私にも飲ませなさいよ!」

俺は外野を無視して、さらに飲む。


「うむー! こんな美味い液体は初めて飲む! もう死んでもいい! この世の幸福を溶かして、それを原液で飲んでいるかのような感覚!」

「私にも一口!」

「貸しなさいよー!」


俺は外野をはねのけて、

「この甘美な美酒は、まるで至高の一品。珠玉の名水だ! うーんこの香りは、なんとこの世の快と悦を全て混ぜたかのような芳醇なブランデー! 世界中の全ての森羅万象を凌ぐアカシックレコードのラグナロクのアタナシアのようだ!」


「頼む! 私にも一口! ひと舐めでいいから!」

「飲ませなさいよー!」

グイグイくる女どもを制止し、俺は残りの液体を飲み干した。

「ご馳走さま! いやー美味かった。美味かった!」

「「あ!」」

「全部飲むことないだろっ!」

「ひっどーい! ちょっとくらいくれてもいいじゃない!」

「うるせーなー! 俺が当てたんだからいいだろ!」


「あのーお客さん?」

と、店主。

「見損なったぞ!」

「ケンのケチッ!」

「うるさいな! 次に当たったら分けてやるから! それでいいだろ!」


「あのーお客さん?」

と、店主。

「なんだよっ?」

「それ普通の水じゃったわい。すまんのう。水道水と間違えてしまったわい。ガッハッハー」

店主は悪びれる様子もなく、大きく口を開けて、笑いながら言った。




「喉を落ちていくこの感覚は、まるで濃厚な黄金を溶かして流し込んでいるような感覚だ! ですってー! あははー。おかしー」

「世界中の全ての森羅万象を凌ぐアカシックレコードのラグナロクのアタナシアとも言っていたぞ! ただの水なのに!」


「ケンってばただの水道水を、“間違いなく、液状宝石ダイヤモンドリキッドだ!“ってはしゃいでいたわねー! 恥ずかしー!」

「おい! あんまりいじめるとかわいそうだろ! でも、さっき水を飲んだだけで、自分が神様になったかのようだって言っていたな! あれは傑作だ!」


「確か、もう死んでもいいって言っていたわよね!」

「ああ! 私は確かに聞いたぞ! ケンは、もう死んでもいいそうだ!」


「さらにさらにー。なんかそれっぽく食レボしようとしていたけど、知識の浅さが滲み出ているわよね。世界中の全ての森羅万象って、森羅万象の使い方間違っているわよ!」

「森羅万象自体に、全てのものという意味があるな! 腹痛が痛い。とか雷が落雷したと言った使い方を同じ間違いだな! うーん。私だったら自殺してしまうほど恥ずかしいな」


「ほーんとよねー! あははっ! でもこの辺にしておいてあげようかしら! そろそろかわいそうになってきちゃったわ!」

「すまん。ちょっとからかいすぎたな」

「ええ。ごめんなさい。もうこの話は終わりにしましょう!」


[三十分後]

「それにねー。水道水を飲んでいる時のあの顔! 写真に収めたかったわ! だって目を閉じて、いかにもご満悦みたいな表情だったのよ!」

「うむ! まるで入滅する時の高僧のようだった。悟りを開いた人間はあのような表情になるんだな。また一つ、賢くなってしまった」


「はああ。ケンはいいわよね! ただの水を飲んだだけで、最高な気分になれて。羨ましいったらありゃしないわ!」

「今度からケンの食事は、全部水だけでいいな!」


「ええ! 大賛成よ! そんなに水が好きなら、私の分の水もあげちゃおうかしら!」

「きっと喜ぶだろう! 今度からケンは、三食水だけだ! ケンは、水を食べる男だ!」

『パワーワードを感知しました。アルトリウスの能力が上がります』


「お! 能力が上がったぞ!」

「パワーワードとして感知される分類は三つあるわ。きっとこれは三つ目の“人生を変えるような一言”のやつよ!」

「確か嘘であってはならないんだったな!」


「当然よ! 嘘なもんですか! ケンの人生は、たった今、変わったの! おめでとう!」

「おめでとう!」

その時だった。


「おいっ! いい加減にしないか!」

口を開いたのは店主だった。店主は続ける。

「あんたらさっきからネチネチネチネチとかれこれ三十分もこのお兄さんのことをいじめて! あんたら友達じゃないのか? ほら! 見てみろ! 半泣きになっているぞ! もうやめるんだ! みんなが楽しく笑える冗談ならいいが、これはやりすぎだ! そもそも、」


[さらに三十分後]

「ガッハッハー。そりゃー傑作だ! ケンっつったか? 坊主本当に、恥ずかしいエピソードがたくさんあるな! 普通の人だったら自殺もんだぞ!」

「でっしょー! んでね! その時、ケンはこう言ったのよ!」


「ガッハッハー! それってまさか、さっき言っていた“あの話”のことか?」

「勘が鋭いわねー! ケンの話はまだまだこれからがいいところなのよ!」


俺の恥ずかしい話トークは絶好調だった。アリシアの口からは、俺のエピソードが洪水のように出るわ出るわ。盛り上がり方はもはや異常だった。


「おい! アリシアもシゲさん(店主のこと)ももうそろそろいいだろう。ケンはさっきからカウンターに突っ伏して寝ているふりをしているぞ! もしかしたら泣いているかもしれんな」


正解。


「あ! そういえば、ケンの話でこれだけは言っておかないといけない話がある! 危うくその話をせずに終わるところだった。危ない危ない」

「ええー! なになに! 私その話気になる! シゲさんも気になるでしょう?」

「なるなる! どんな話なんじゃ?」

「あれはな」


[さらに三十分後]

「と、まあこういう話だ」

「うぇーん。ケンにそんな秘密があったなんて! もうこれからは、ケンの目の前でスルメイカは食べないようにするわね!」


「ぐっ! くっ! 涙が次から次へと溢れてきやがる。この歳になってこんなに泣くなんてな」

シゲさんは、嗚咽をあげて泣いている。


「なー」

俺は三人に消え入りそうな声をかけた。


「もういいだろう。そろそろ今晩の宿を探しに行こう」

「な! もうこんな時間か!」

「うっかりしていたわ!」

「しまった! もう店じまいの時間だ! ちょっと待ってな」

シゲさんは、店の奥に行くと、ペットボトルを持ってきた。


「なにこれ?」


「本物の液状宝石ダイヤモンドリキッドだ!」


「いらんわ!」

「いやいや。そう言わずに飲みな! それとも坊主は水道水の方が良かったか?」

くー。バカにしやがって。俺はシゲさんからペットボトルと三つのコップをひったくると、三等分した。

そして、


「「「いただきます!」」」

液状宝石ダイヤモンドリキッドを今度こそ、勢いよく飲み干した。

「「「うん。普通の水だ」」」

液状宝石ダイヤモンドリキッドは、ごく普通の水と同じ味だった。


“公平な水屋”を出ると、辺りは夕暮れに抱かれていた。オレンジ色のレーザーが沈みかけの太陽から降り注ぐ。それは、質量のない攻撃のようにも思えた。


オレンジ色の光の流星は、地表にいる者の瞳に突き刺さる。激しく網膜を焼くその光は、まばゆくってあったかい。

ほのかに熱を帯びた光の束は、昼を殺して、夜を生み出す前触れ。

大地を撫でる夕暮れは、まるで母親の愛。夕暮れの日差しの中を、俺たちは歩いていく。

オレンジ色の陽だまりの中を歩いているみたいだ。


そんな、陽だまりの中で、

「さあー! “公平なホテル”の抽選会が始まるよ! 今晩の宿を探している人は寄ってらっしゃいなー!」

ホテルの従業員らしき人が呼び込みをしている。

俺たちは、足を止めて、

「ちょうどいい。今晩はここに泊まるか」

「賛成!」

「オッケー!」

そして、俺たちは、その怪しい抽選会とやらに参加することになった。


ブックマークがゼロから1になりました! ありがとうございます! 次はブックマーク10を目指して頑張ります!

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