第二巻 完結
第二巻 エピローグ
[パワーダンジョン『最先端技術がある古代遺跡』にて]
グシャリ。鈍い音が空気にこだます。
「やめろ。どうしてこんなことする?」
グチャっ! 何かの部品が踏み壊された。
「私はこれからたくさん人を助けるんだ。たくさんたくさん人を助けるんだ」
ブチッ! ズリュズリュ! 人型ロボットの腹から大量のケーブルが引きずり出された。
「やめてくれ。頼む。私は人助けがしたいんだ」
バキッ。 破裂音とともに、ケンと戦った人型ロボットの胴体が踏み壊された。今際の際のロボットは、もがれた首にくっついているカメラで、自身を破壊した人物の姿を捉えた。
「お前! なぜお前がこんなことをする? お前は私のことを救ってくれたあの三人(ケン、アルトリウス、アリシア)の人間の中にいただろう!」
黒フードを頭からズッポリとかぶったその人物は言った。
「黙れ」
そして、大きく足を上げて、ロボットの頭部を惨たらしく踏み壊した。
グシャッ!
「あの時助け、てくれたのに。一体ど、ういうこ、とだ?」
「この場所が存在していると都合が悪いんだ」
ロボットの頭部からは、幾つもの機械の部品が飛び出している。頭を何度も鈍器で殴られた人間のようだ。オイルが血のように流れ出て、床を濁った色で飾る。
「思い出し、た! そうだ! お前の名前は」
黒フードは高々と足を上げて、それをそのまま無慈悲にロボットの頭部に落とした。
「死ね!」
グチャリ!
鈍い音とともに、ロボットの頭部は完全に破壊された。もう二度と修復などできない。粉々になった頭蓋からは、生々しい部品が脳みそのようにぶちまけられた。
バキバキっ!
黒フードは幾度も幾度も怒りを叩きつける。
グシャッ! バリっ! バキッ! ゴキっ! グチャ!
「この世界にハッピーエンドなどない」
静寂の海の中で、死んだ機械を踏み砕く音だけが響く。悲しくて、絶望的で、どす黒い。
物語は加速する。乗っている者たちを振り落とそうとしているみたいだ。
ケンとアリシアとアルトリウスとウルフが、皆殺しにされた機械たちを発見するのは、その少し後だった。
光あるところに影はある。
希望があるところに絶望がある。
黒く淀んだ光の中で、美しい闇だけが輝いている。
第二巻完。第三巻へ続く。