帰宅
そして、王様は誰もいない空に向かって突然一人で喋り出した。
「すべての読者の皆様へ。いつも読んでくれてありがとうございます。皆様の応援や感想は、執筆の励みになります。
どんなに嫌なことがあっても、どんなに辞めたいと思っても、皆様がいるから書くことができます」
「王様が空に向かって喋り出したぞ? 誰に向かって喋っているんだ?」
俺は不思議そうな顔で首を傾げた。
「さあ?」
アリシアも首を折る。
そして、王様が続ける。
「お世辞も建前もなしで、心の底から深く感謝しています。いつも私の小説を読んでくれて本当に本当にありがとうございます。
漫画や小説を中古で買われたり、友達から借りられたら、作者には一円も入りません。それでも良いのです。金が入ってくるかなんてどうでも良い些細な事です。
感想を書かれても“なろうのポイント”にもならないし、一円もお金はもらえません……でも一円にもならない『面白い』の一言が、何千億円もらうよりも嬉しいのです。
例え、両足が千切れても『手じゃなくてラッキーだ!』と言いながら笑顔で書き続けます。
例え、両腕がもがれても、音声入力で書き続けます。
例え、両目が抉り出されても、ブラインドタッチで書き続けます。
例え、この世からパソコンが消えても、鉛筆でノートに書き続けます。
例え、この世から鉛筆すら消えても、自分の血を使って指で書き続けます。
小説の中の主人公が諦めずに戦っている。だから私が諦めるわけにはいかない。
小説の主人公以上に、諦めずに書き続けることを誓います。
いつか億万長者になってバカでかい家を買っても、今と変わらず一文字一文字に命と魂を削ってこめます、あなたがこうして小説を読んでくれるなら」
「王様って城に住んでいるよな? なんの話してんだ? ってかなろうポイントって何?」
「さあ?」
「私は必ず小説家になります。“小説家になろう”ではなく“小説家になるまでやめない”。過信でも大袈裟にいうのでもなく、百パーセント作家になれます、いや、なります。
なるまで書き続けます。だからどうか私の拙い小説を読んでください。
私はいつでもこの“なろうの世界”で読者の皆様を待ち続けます。
最後にもう一度言わせてください。読んでくれてありがとうございます」
王様は空に向かって深々と礼をする。側から見たらやばいやつだ。
「王様はさっきから誰に喋ってんだ? もしかして、この世界を伝記にでもするつもりなのかな?」
「さあ? っていうかそろそろ帰りましょうよ」
「よし! じゃあ家(なろうの国の豪邸)に帰るか!」
もう一度家に戻ろうとする俺はハイデルキアに引きずられて行った。




