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この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜  作者: 大和田大和
第五巻 LGBTの世界
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御託はいい……きな!

「ギャハハは! あいつ今みたか? 『今、何かしたか?』っていいながらほぼ全弾攻撃食らってたぞ?」

「おめえこそ、今、何かしたのか? 棒立ちしているようにしか見えなかったぜ!」

「何それ! ウケんね!」

「ウケる。ウケる」

と、アリシア。オメーは俺の味方だろ。なんで突っ立って観戦してんだよ。


俺は慌てて、背後を振り返り、もえに

「おい! 今の何だ? なろう主人公ならモブの攻撃くらい余裕で弾けるだろ?」

「多分、王様の執筆ペースが遅れたから、なろうの加護が弱まっているんだからね」

「じゃあ。こいつらにはチート能力なしで勝てって?」

「そうなんだからね!」

「ふー。やれやれ。なら普通にけちょんけちょんにしてやる! 水よ! 燃えろ!」

だが、俺の手に宿ったのは、木の枝みたいな細い剣だった。

「あれっ?」

水の剣はチョロチョロと床に溢れながら、ぐにゃぐにゃ揺れている。キレの悪いしっこか? ってくらいチョロチョロだ。


「ひゃーはっはっは。あいつあの実力であんなイキってんのか? 俺のしっこの方が勢いあるぜ!」

「ギャハハ。何なら俺がおめえ(ケン)に助太刀してやろうか?」

「それマジうけんね。ナメプじゃんね!」

「何なら私も助太刀してやろうか?」

と、アリシア。逆に聞くけど、なんでしてくんないの? 仲間じゃないの? っていうかさっきから異様にスムーズにヤンキーの会話に滑り込むけど、ネタ合わせでもしてきた?


「ぶっ殺すっ!」

俺はしっこみたいな剣を構えて、飛び上がる。勢いよく空を割いて、体をひねる。大きく三日月のように振りかぶり――

「おい! 何だ、あの動き? あいつひょっとしたら本当は強いのか?」

「実力を隠してたってこと? ウケんね!」

「あんな動き始めてみるわ。ウケんね!」

と、アリシア。見たことあるだろ。っていうか心の中で突っ込むのだるくなってきた。


「オラあああああああ!」

俺は水の剣をバカそうなヤンキーの脳天目がけて叩きつけた。

ガチャーン!

金属と金属が弾けるような音がした。ヤンキーは俺の剣撃をしかと防いだ。

(全力なら一刀両断なのに!)

そして、ヤンキーは俺の目を見て、

「今、何かしたか?」

ヤンキーは俺の攻撃で無傷だった。


「何―? マー坊! おめえ今の見切ったのか?」

「えー! マー君やるじゃん! ウケんね! ウケんね!」

「すごいわマー君!」

と、アリシア。もしかしてお前ら友達なの?


そして、マー君の快進撃は始まった。


「ねえ! あのヤンキーすごいわ!」

「本当ね! めちゃくちゃ強いのね!」

「ヤンキー。かっこいいわ!」

「ものすごく男らしい! 好き!」

「勇者様!」

「素敵!」

と、なろう系の国の女性たちが艶声を上げる。やばい、ヤンキーがなろう系主人公みたくなってきた。


っていうかさっきの攻撃は、ヤンキー躱せてないからな。俺の攻撃が早すぎて、頭から食らっただけだ。だけど、俺の攻撃がしっこみたいな勢いしかないから無傷だっただけ。


「くっそおおお! あの声援を浴びるのは、俺の役目のはずだ!」

俺は地団駄踏んで、悔しがる。だんだん俺がなろう系主人公に挑む雑魚っぽくなってきた。

マー君は、俺の目をまっすぐにみる。細眉毛とカラコンが彼のヤンキー力を際立たせる。

キリッとした瞳が街の喧騒の中で燃えるように光る。

マー君は、右手をまっすぐ俺に向ける。チョイチョイと挑発するようなポーズをして見せる。

マー君は、俺に向かって、

「御託はいい。来な」

そして、形成は逆転した。


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