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この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜  作者: 大和田大和
第五巻 LGBTの世界
245/260

一応戦闘

「いやもう少しゆっくりさせてもらうとするよ」

「いや、冗談ではなく。本当に帰ってもらいたいです」

顔がマジだ……やばいかも。

「遠慮するなよ」

「お願いします。マジで帰って」

「そういうなって」

「いい加減にしろよ! あなたたちいつまでゴロゴロしているんですか? え? なろう系の小説の主人公の方はこんなことしません。ちゃんと魔王と闘います」

ついに王様はガチギレした。本当に切れている。今にも憤死しそうなほど怒り狂っている。

「まあまあ……」

「なろう系小説をバカにしているのですか? っていうかこの部屋で何か死んでいますか? 死臭がプンプンします」

「それは俺の口の匂いだ」

「それにあなた何日間風呂に入っていないのですか? 全身から排泄物のような匂いがします」

「一週間くらいだけど?」

「“一週間くらいだけど?”じゃないでしょう。なろう系の主人公は風呂に入ります。もう十分楽しんだでしょう? えっ? 女を侍らせ、従者をパシって、食って、飲んで、騒いで、死んだように眠り続ける。もういい加減自分の国に帰ってください。っていうか早く帰れ! 馬鹿者!」

雰囲気がガラリと変わる。もう以前までの従順な王様の面影すらない。顔面に“怒り”を貼り付けて、怒号をレーザーのように飛ばす。

「あの……すいません」

「謝っても遅いですよ。ほら! 準備をして、とっとと出ていってください! そして、金輪際この国の国境を跨がないでください。あなたのような人にいられるとこの国の将来が、なろう系小説の未来が、危ぶまれます」

「おっしゃる通りです」

俺は正座して、説教を受ける。

「だいたいあなた、一体何を考えているんですか? なろう系の世界に来れば、仕事も勉強も何もないとでも? そんな甘い世界などありません。いい加減にしてください!」

「はい。ごめんなさい」

うう……だんだん自分のバカさ加減に気づいた。帰ったら真面目に働こう。

「私も長年この国で王を務めていましたが、あなたのような腐った勇者は初めてです。あなたは、喋るうんこです。即刻この国から出て行ってください。“今すぐ”!」

「わかりました。長い間お世話になりました」


[一週間後]

「あっはっはっは! ケンさん、まじで面白いですな! このままずっとこの国でゴロゴロしていていいですぞ! というより、王自らお願いします。この国にずっといてください! 頼みます!」

「はっはっは。じゃあ。お言葉に甘えさせてもらおうかな」

「あはー。王様、すっかりケンのこと気に入ったわね」

「最初はいがみ合っていたが、ここに友情が芽生えるなんてな。うんうん! いいことだ」

と、アル。膝の上ではもょもとが寝ている。

「わしは、アル殿とアリシア殿のことも親友じゃと思っていますぞ!」

「よせやい」

と、アル。

「照れるべ」

と、アリシア。


楽しそうに、談笑する俺たちに――

「あのー。王様? 何やっているんですか?」

と、水をさすもえ。


「あなたねー。この国の王様であることにもっと自覚を持ってください! あなたケンたちを『いい加減に追い出してやる、いや殺してやる! わしに任しとけ!』って言ってましたよね? ミイラ取りがミイラになっているじゃないですか?」

「ごめんなさい」

王様がめっちゃ年下の女の子に怒られている。この王様頼りねー。っていうか、俺のこと殺そうとしていたの?

「あなた執筆の方も全然やっていないじゃないですか? これじゃあなろうの国が消えてしまいますよ?」

「はい。おっしゃる通りです」

王様、情けねー。と、思いつつ、

「執筆? 執筆って何? それにこの国が消えちゃうって?」

と、もえに聞いてみた。

「王様はラノベ作家だからラノベを“なろう”に投稿し続けないといけないのよ。それがこの国のルールよ。っていうかお兄ちゃんは水を刺さないで! ばっかじゃない?」

もえは、再び哀れな王様の方を向いて、

「読者のことをいつまで待たせるおつもりですか? 投稿ペースが遅れると飽きられちゃいますよ? なろう系の小説なんて、激戦区ですからね! だいたい――」


『[一週間後]

「きゃっはははは。おっもしろーい! お兄ちゃん永遠にこの国にいてニートしていていいわよ!」

「おいおい! そんなにくっつくと他の妻たちが嫉妬しちゃうぞ! このー!」

俺はもえの額をコツンと叩いた。

「あいたっ! お兄ちゃんひっどーい! お兄ちゃんはもえだけのものなんだからねっ!」

「ははは。俺はみんなのものだよ」

「お兄ちゃん。だーいすきっ!」』


などという都合の良い展開になるはずもなく……

城下町まで案内されると――

「はい。じゃあ以上でケンのなろう滞在は終了です。お疲れ様でした。お帰りはあちらです」

営業スマイルが消えたもえは、まるで機械のようだった。淡々と蛋白に説明だけをする。

物言わぬ機会は、歯車の家。カタカタと音を立てて一定の動作のみを行う。

「はい。どうもありがとうございました。楽しか――」

「お帰りはあちらです」

「はい……」

荷物を持って、帰路に着く。その時だった――


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