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この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜  作者: 大和田大和
第五巻 LGBTの世界
234/260

それな!

俺が立っている惑星だけは無事だった。ポツンと俺たちだけが銀河に取り残された。

真っ暗になった世界の中で、

「俺、なんかやっちゃいました?」

先生は、俺の肩を両手で掴んで、

「世界の……終わりよ……あなたがやったのよ……」


あたりは阿鼻叫喚の地獄絵図兼無限地獄になった。それを引き起こしたのは俺だ。

胸の中に罪悪感がこみ上げてくる。軽い気持ちでやったのに……なんとかなると思っていたけど、大惨事っぽい。どうしよ……


「もうおしまいよ!」

(ひいいいいい)

「私たち死ぬんだわ!」

(ごめんなさいいいい)

「全人類の死滅よ!」

(ご、ご、ご、ごめん)

「惑星の崩壊が……今、始まる!」

(まじごめん。許して)

「歴史は閉ざされた」

(ごっめーん)


「あんたどうすんのよ?」

アリシアが俺を責める。

「お前、責任を取れよ……私も一緒に謝りにいってやる」

アルも俺を責める。謝って済む問題じゃないだろ。

先生は両手で俺を掴んで、ガクガクさせながら、

「あなたやっちゃいけないことをしたのよ? わかる? ここは“なろうの世界”あなたが今まで暮らしてきた平穏な世界じゃないの。あなたのパラメータは全部マックス。完全無欠最強無敵なの。あなたには指先一つで世界を破壊する力があるのよ? だからちょっとミスをするだけで世界は消えて無くなる」

(どうしよう。どうしよう。どうしよう。どうしよう)

さっきまであんなに楽しくヨイショされていたのに、地獄に突き落とされた。

「あの……先生、俺どうすればいいですか?」

「どうすることもできないわ。みんなで死にましょう」

ひいいいいいいい。マジで? マジでどうにもならないの? 強すぎてこんなことになるなんて、なろうの世界を甘く見ていた。こんなにゲームバランスがぶっ壊れているとは?

ん? 待てよ――

「俺ってこの世界で一番強いんですよね?」

「そうよ? でも流石の貴方ももう終わりね」

「なら、指パッチン一つで全部かいけーつ。みたいなことってありませんかね? それは流石にちょっと都合が良すぎますかね?」

「なろうの世界をバカにしているの? 流石になろうの世界でもそんなことは絶対に無理よ! 指パッチン一つで全部かいけーつだなんて聞いたこともないわ! バカにするのも大概に――」

俺はうるさいのを無視して、パッチン!


その瞬間、天から瞳を焼き尽くすほどの光が降り注いだ。光の雨は地表を濡らす。はるか彼方の銀河では、新たな惑星がビッグバンを起こしながら息吹始めた。銀河系がみるみるうちに修復されていく。

綻びももつれも、全てが元どおりに収束していく。束ねられた平和への道は、寄り合いながら一つに向かう。

太陽が復活し、惑星は再び鼓動を始める。地表の隆起は何事もなかったかのように全部元どおりになった。大地の傷口も空の怪我ももう見えなくなった。


元どおりになった世界の中で、俺は、

「俺、なんかやっちゃいました?」

それを見て、先生は、

「世界は……救われた」

女の子たちは、

「信じられない」

(だろ?)

「ケンは私たちの救世主よ」

(よせやい)

「新たな歴史が……今、始まる」

(本当それ! 略して“ほんそれ”!)

「ケン様が新たなる創造主様よ」

(そ! 正解!)


その後、俺はいい気になって、水、風、土、雷、光、闇の全部で同じことをした。

俺がちっこい球を生成し、空に打ち上げるたびに世界が崩壊し、指パッチンするたびに、世界は創造された。

その度に、全女の子たちが俺のことを持ち上げた。これでもかというほど褒めちぎり、褒め称え、崇め奉った。まるで神様になったような気分だ。


水球をペイっ――「俺、なんかやっちゃいました?」

風球をペイっ――「俺、なんかやっちゃいました?」

土球をペイっ――「俺、なんかやっちゃいました?」

雷球をペイっ――「俺、なんかやっちゃいました?」

光球をペイっ――「俺、なんかやっちゃいました?」

闇球をペイっ――「俺、なんかやっちゃいました?」


俺は愚民どもに向かって、

「俺、なんかやっちゃいました?」


「ケン様ってなんでこんなに強いんですか?」

「強いだなんてよしてくれよ。僕は強くなんかないよ。普通だよ」

「普通? 普通なんかじゃないです! 凄すぎますっ!」

俺は、

「ですよねー!」

別の女の子は、

「世界がぶっ壊れちゃう!」

俺は、

「それな!」


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