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この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜  作者: 大和田大和
第五巻 LGBTの世界
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ラブコメ展開


第一章「君のためなら死ねる」〜魔術学院でワクワク水泳大会ポロリもあるかも


「ここが俺が今日から通う魔術学院か! なになに? “私立高校生になろう学園”これが学院の名前か! まんまだな!」

制服を着た俺は目の前にそびえる学院を見上げた。空高く伸びる一本のビルはまるで天井に手を伸ばす子供のようだ。

空を突き刺す摩天楼は、金色のリングをいくつも貫いている。そしてそのどれもが独りでに空中浮遊している。まるでビルがフラフープをしているみたいだ。

ビルは全面ガラス張りになっていて、そこから中が見える。俺はそのガラスを目を凝らして見た。

「え? なんで?」

中では若い女の子たちが一斉に着替えていた。

「更衣室かよっ! っていうかなんでガラス張りにしたの? 外から丸見えなんだけど……」

背後から、

「おっはよう! それはね、“たまたま”目に入っちゃったら、覗きは犯罪じゃないからなんだからね!」

「ってことは、俺に見せるためだけにガラス張りにしたの?」

「そういうことなんだからね! でも……あんたなんかのために見せるためにガラス張りにしたんじゃないんだからね!」

「んんっ? ツンデレ口調のせいで、わかりにくい!」

「ほらっ! 遅刻しちゃうわよ!」

もえは俺の袖を引っ張っていく。


すると――

ドシン!

「いってぇ」

俺は誰かにぶつかった。

「ごめんなさい。大丈夫ですか?」

目を開けると、

「あれ? 君は?」「あれ? あなたは?」

そこにいたのは、俺がジャロから助けた猫耳ちゃんだった。猫耳ちゃんは、

「先日は助けていただいてありがとうございます。それとケンの奴隷になれて幸せです!」

「いいよいいよ。大したことをしたわけじゃないから」

「では!」

そういうと猫耳ちゃんは走り去っていった。


「ほら! デレデレしてないで! 遅刻しちゃうよ! お兄ちゃん!」

もえは再び俺の袖を掴んで引っ張っていった。

すると――

ドシン!

「いってぇ」

「ごめんなさい。大丈夫ですか?」

目を開けると、そこにいたのは先日俺が助けたハーフエルフちゃんだった。ハーフエルフちゃんは、俺の彼女だったような気がする。もう彼女が多すぎて誰が彼女で誰が妻だか覚えていない。

「お怪我はありませんかケン様?」

「いや。大丈夫だけどこんなとろで――」

言い切る前に、

「先日は助けていただいてありがとうございます。それとケン様の妻になれて幸せです! では!」

と、言って足早に去っていった。しまった妻だった。


「ほら! お兄ちゃん! いつまでデレデレしてるの! 遅刻しちゃうよ!」

もえは再び俺の袖を掴んで引っ張っていった。つーかお前、俺をわざと女の子にぶつけてない? 気のせい?

すると――もえは俺の袖を掴んで女の子に向かって投げ飛ばした。

「おらあああああああ!」

ドシーン!

(やっぱり。転向初日に女の子と道端でぶつかるイベントを力づくで起こす気だ。っていうかおらあああああって言った?)

「いってぇ。マジでいてえ……んで、今度は誰だ?」

俺が目を開けると、見知らぬ赤毛の女性だった。

「人にぶつかったのなら謝るのが筋なんじゃないの? ふんっ!」

女の子は足早に去っていった。


「今のは誰だよ。っていうかさっきから何回人にぶつかるんだよっ!」

俺は学校の入り口へと続く校庭をよく見た。

「うわっ! なんだこりゃ!」

よく見ると、校庭の花壇や、プレハブの裏、水道の横、砂場の中、プールの中、至る所に女の子がスタンばっている。こちらを凝視しながらクラウチングスタートの姿勢だ。

こいつら俺にぶつかるつもりだ! っていうかプールの中にいる子は何考えてんの? まさかザバアアアアアアって水中から飛び出して、襲いかかってくるってことはないと思うけど……


「さ! お兄ちゃんいくよ!」

「えっ? マジで? 偶然俺にぶつかって“あ! あの時の!”的なことがしたいんじゃないの? 俺が気づいたらダメじゃ……」

「レッツゴー!」

そして、俺は校庭中を引き摺り回された。

「ひいやああああああああ!」


ドシン! きゃあっ!

ドシン! いったーい!

ドシン! いっやーん!

ザバアアアアアア! おるあああ!


女の子たちは、バイソンのように俺に向かって突進してきた。完全に俺に狙いを定めている。何度も何度も女の子たちにぶつかった。全身に青タンができた。

そして、ようやく俺たちは教室についた。

ガラララっ!

「「「「きゃあっ!」」」」

教室に入ると、女の子たちが着替えている真っ最中だった。

「うわっ! ごめん!」

俺は急いでドアを閉めると、十分待った。もういいだろう。

ガラララっ!

「「「「きゃあっ!」」」」

「えっ? なんでっ?」

着替えるのおっそ。マジか。まだ着替えているとは思っていなかった。

三十分待った。もういいだろう。

ガラララっ!

「「「「きゃあっーーーーー! エッチーーーー!」」」」

「えっ? まだ着替えてんの?」

俺は気づいた、女の子たちの着替えが一切進んでいないことに。これはあれだ。着替え中に、偶然入っちゃったイベントだ。なろう系ではよくあるのだろうか。

っていうか女の子たちはわざわざ俺に見せるために、牛歩戦術みたいに着替えているのか……

俺は再びドアを開けた。

ガラララっ!

「「「「きゃあっ!」」」」

そして、何も見ないようにしながら自分の席についた。すると、ようやく女の子たちがジャージに着替え始めた。

(うう、ここまですごいともはや迷惑以外の何モノでもない……)

俺は教室を見渡した。もう下着姿の女の子はいない。っていうか女の子多っ! 俺以外全員女じゃん。

「あ! アリシアだ」

アリシアは机に突っ伏している。何をやっているんだあいつ? 俺に気づいたアリシアはこちらを向いて、曇った顔をパアっと輝かせた。その瞬間、俺は目を逸らした。

(わかった。あいつガチぼっちレベル九十九だから友達を作れないんだ。プーいい気味だ。しばらくほっとこっと)

「ん! アルもいる」

アルもアリシアと同じように友達が作れないようだ。机に両眼が釘付けになっている。微動だにせずに机を穴が開くほど見ている。木目でも数えているのだろうか?

(うう……声をかけにくい……ほっとこ)

そして、俺の隣の席に、

「あれ? お兄ちゃんの席私の隣なの?」

座ったのはもえだった。

「みたいだな。この学校なんで女の子しかいないの?」

「あんたが私の席の隣でも全然嬉しくなんか――」

ガラララララっ!

「はい! 席についてー!」

担任の先生が中に入ってきた。先生は俺に気づくと、

「あ! ケン様!」

「あ! この間のレストランのコックさん」

先生は、俺に莫大なアイデア料をくれたコックさんだった。コック兼先生か、すごいな。っていうか『あなたはあの時の!』イベントを先生とやるとは思わなかったな。

「教室の中でコックさんはダメよ! 私はあなたの先生。ただの教師と生徒。いいわね? さ! 今日は転校生を紹介するわ!」

(なんか言い方がエロい……)

ガラララララっ!

そして、転校生が教室の中に入ってきた。

「「あ!」」

「転校生って猫耳ちゃん?」

「あなたは今朝の男子! あんたのせいで今日は遅刻しちゃったんだから! もう知らない!」

「え? 遅刻しなかったでしょ? 間に合っているじゃん?」

「…………」

その瞬間、おし黙る教室。

(わかった。これラブコメのワンシーンなんだ。だからそれっぽくしないと話が進まないんだ)

「お、俺もお前のことなんざ知らねーぜ。けっ。顔が可愛いからっていい気になるなよ。けっ! けっ!」

(こんなんでいいのかな……? なんか違うような気もするけど)

「あんたたち! 無駄話しないの! 猫耳ちゃんは席について。そうね、ケンの隣が空いているわ!」

(さっきので良かったらしい。っていうか俺の隣にはもえがいるんだが……)

すると、何かを察したもえは、スッと立ち上がり何も言わずに教室から出ていった。

そして、その席に猫耳ちゃんが座った。

(うわあ。ラブコメの展開上邪魔だからクビになったんだ……)

猫耳ちゃんは、

「あんたが隣なんてマジ最悪」

(お前確か俺の奴隷だったよな……)

俺は、

「こっちだっていい迷惑だよ。けっ!」

と言った。なんかだんだん楽しくなってきた。


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