彼女ができました(笑)
「うぬぬー! 生意気なー! ぶっ殺してやるっ! うん!」
そして、この国での最後の戦いが始まった。
(え? もう最後? はっや!)
ジャロは、
「お主が例え伝説の勇者でも、奴隷をむざむざ開放させるわけには、いかないのじゃ!
我輩には闇ギルドスキル“ダークファントムアタック”というものがある!
我輩のダークファントムアタックは、体内の魔子を黒いオーラに変えて飛ばす必殺技じゃ。
闇ギルドに属する者だけが使えるのじゃ。ちなみに魔子とは、空気中に漂う魔力の元のことじゃ。
これはの……太古の昔に存在した魔女が残した遺産なんじゃ。
そして、今のこの時代になっても、彼女はまだ人類のことを助けたいのじゃろうな……ジャロだけに……」
なっげーーーーーー! 説明が長いわ! しかも最後余計! ってか何で自分の能力をベラベラ説明するの?
ジャロはダークファントムアタックとやらを発動した。
体から黒い湯気のようなものがうっすら見えなくもない。見るからに弱そうだ。
そして、
「ダークオーラ!」
(あんだけ説明しといて、ダークファントムアタックは発動しないのかよ!)
俺の体に向かって弱そうな闇の攻撃が迸る。曲線が空に軌跡を残しながら俺に近づく。
っていうかさっき闇属性無効だって言ってのに……なんでわざわざ無効化される闇攻撃?
俺は、
「懲りない人ですね。ここは僕のユニークスキルで片付けてあげましょう!」
「「「「ユニークスキルだとっ?」」」」
沸く会場。
「説明しましょう。ユニークスキルとはユニークなスキルのことです」
「「「「おおおおー!」」」」
(…………もうツッコミがめんどい)
「僕だけに与えられたオリジナリのスキル。その能力は……未知数」
俺は右手を前にカッコよくかざした。
(くるの? ユニークスキルがくるの?)
俺はいつの間にかなろうの世界の虜になっていた。自分が主人公で最強無敵。こんなに嬉しいことはない。俺は貧乏だからテレビゲームをやったことがないけど、ゲームの“強くて二周目”みたいなもんか? よくわからんけど。
そして、俺のユニークスキルは発動した。
「スキル発動! “僕の考えた最強の力”!」
その瞬間、俺の右手から最強の攻撃が解き放たれた。
俺は右手からズビビビビとミサイルを出しながら、
「え? どんな能力か気になるって? しょうがない。僕が説明しよう。
ユニークスキル“僕の考えた最強の力”とは?
僕がこのスキルを発動した瞬間、右手から無量大数個のミサイルが発射されます。そのミサイルは全て真空中の光の速さで飛びます。その全てのミサイルは二千パーセントの確率で敵の弱点を自動で解析したあと……命中します。
ミサイル一つ一つには、惑星を一つ木っ端微塵に吹き飛ばせるほどの火力があります。物質を原子、分子レベルに分解し、存在そのものを消すことができます。
さらに、この攻撃の間僕は無敵になります。いかなる攻撃も完全に無効化し、さらにカウンターまで与えます。
さらに、攻撃を行ったあとには全宇宙の全ての神羅万象を僕のコントロール下に置き、意のままに操ることができます。
さらに、この後、僕は一生無敵になります。
そして、最後に、僕は全治全能になって空間能力と時空能力を使って時間すらも巻き戻せるようになって、さらに人間の生死すらも意のままに操ることができます。
以上の根拠により、僕が最強だと言えよう」
(小学生かよっ! ゲームバランス悪いな(笑)でも現実にこの能力が使えたら最高に楽しい!)
そして、俺の攻撃は全てを滅亡させた。ジャロは細胞の一つも残さずに銀河から消滅した。というより俺の力によって、歴史上から抹殺されたのだ。
ジャロという人間など、最初から存在していない。
そして、俺は無敵のパワーとやらを使って、惑星を復元させてから、時を戻し国を作り直し、ジャロも生き返らせた(この間約一秒)。
ジャロは地面に無様にひれ伏している。
「どうしますか? ジャロさん? まだ僕と闘いますか?」
「ひいいいいい」
ジャロは腰を抜かして、戦意喪失している。
「まだ戦う意志があるのなら、僕の方は構いませんよ?」
俺は元気よく言った。
「勘弁してくださーい! 奴隷は全て差し上げまーす!」
そして、この国に安寧と平和が訪れた。霧が消える。闇が死ぬ。眩い光の中心には、俺がいた。
「助けてくれてありがとうございます! あの! 本当に私はもう奴隷じゃないんですか?」
「お礼なんてよしてくれよ! 当然のことをしたまでさ。ハハッ。そして、君はもう奴隷なんかじゃないよ。自由だ。ハハッ」
(笑いかたきも……)
「う、嬉しい。こんな日が来るなんて。これも全部ケンのおかげです!」
「ハハッ! そう言ってもらえると僕も嬉しいな」
“勝利という冠を被る俺”のもとにアリシアたちが駆け寄ってきた。
「ケン! すごいじゃないの!」「ケン! カッコよかったぞ!」「ケン! 見直したわよ! ねー! おばあちゃん!」「ケン坊! あんたいい男じゃないか」「ケン! カッコ良かった! ガルるる」
俺は女の海の中で溺死しそうだ。今回の依頼人であるもえは俺の方を見て、
「あの……私、ケンのことが好きになっちゃいました! というか愛しています! 私と結婚してください!」
もえは顔を真っ赤っかの真っ赤っかに染めながら逆プロポーズをしてきた。空気から彼女の乙女心のような何かが伝わる。
「あっ! もえちゃんだけずるーい! 私もケンと結婚するのに!」
と、アリシア。
「何を言っている? ケンの許嫁はこの私だ」
と、アル。
「私も結婚する!」「私も!」「私も!」「私も!」「私も!」
そして、俺は一気に六十七人の妻ができた。彼女が一度もできることなく、いきなり妻だ。何だこれ? でも嬉しい!




