第五巻 エピローグ
エピローグ 消えてしまった未来にて
[消えてしまった未来]
謎の男は冷たく言い放つ。
「俺がお前を過去に飛ばしてやる」
絶望を顔に浮かべたココは、
「本当に?」
うずくまり泣き崩れながらもその顔を上げた。わらにすがるように、神に祈るしかないみたいに。
「ああ。本当だ」
男はココの弱みにつけ込んだ。人生に絶望している人間ほど取り入りやすいやつはいない。
「これでもう一度みんなに会えるのね……」
ココは思考を停止した。本来、前に進むことしかできないはずの人生を引き返すことにしたのだ。
「ああ。これでみんなに会えるぞ」
男はいやらしい笑みを顔に浮かべる。
「でも、どうして私のことを助けてくれるの?」
ココは涙を拭った。涙に濡れた痕跡のある顔は、まるで生きる屍のようだ。男はココを見て――
「それはな――」
闇の中に映像は消えていく。まるでビデオテープに写る砂嵐のようだ。バリバリチリチリ焦げるようにして黒い闇が画面を覆い尽くす。闇に覆われた世界には、もう綺麗な花など写っていない。あるのはただ白と黒だけの無色透明の荒野だけだ。その荒野は見る者の心をやすりで削る。えぐるように、壊すように、舐めるように……
冷たい闇が世界を覆う。じんわりと、ゆっくりと。
この先に待ち受ける惨たらしい最悪な未来は、大きく口を開けてケンたちを待ち構える。
血が流れ、涙がこぼれ、悲鳴が振るう。
そんな真っ黒な闇の中は、なぜか暖かかった。
第五巻完 六巻へ続く。




