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この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜  作者: 大和田大和
第五巻 LGBTの世界
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俺はココを助けなかった

「ココは能力を開花できていないんだ。俺の『水よ! 燃えろ!』や、アリシアの『炎よ! 濡れろ!』みたいな技を使えないんだ」

そして、心配そうな瞳でココを見つめるゴリアテが、

「ココちゃんは、今まさにそれを発動しようとしているでしゅ。要はぶっつけ本番で勝とうとしているでしゅ!」

ゴリアテの目には涙が潤んでいた。

「オクトパスは『虹よ! 砕け散れ!』と言っていた。だからオクトパスの方がパワーワード使いとしての腕は格段に上だ」

「負けないで……ココちゃん」


オクトパスはニヤケづらで、

「わしら差別主義者がなんで差別をするかわかるかの?」

「そんなこと知りたくもないっ!」

「それはすごく単純じゃ。ただ……何となくじゃよ。なんとなく気に食わないのじゃ」

オクトパスは残り三本の触手を一本に束ねる。激しくタコの皮膚が泡立ち沸騰を始める。

それに対して、ココはただ右手の剣を構えるのみ。

オクトパスは三本足をさらに強固に結合させる。膨れ上がった筋肉の塊は聳え立つ山のよう。盛り上がり、隆起し、ココを踏み潰そうとする。

ココはただ右手の剣を構える。

オクトパスは筋肉の塊を一本の剣にした。巨大な筋肉は大剣となった。

ココは小さい剣を右手で強く握りしめる。


戦いを見守るアリシアが、

「ねえ。あれ加勢しなくても大丈夫?」

「大丈夫だ! ココは勝つ!」


そして、オクトパスとココは互いに双方向から走り、近寄る。

「虹よ! 砕け散れ!」「花よ! 食い尽くせ!」

オクトパスの肉剣は虹色に輝き膨張する。だが、ココの剣からは何も発生しない。


戦いを見守るアリシアは、

「能力の発動に失敗した!」

「そんな! あんなに頑張ったのに! もう勝ち目がないでしゅ! ケンくん! ココちゃんを助けてあげて!」

俺は頭の中にココとの約束を思い描いた。


【ココが負けそうになったときは、俺が助けにいく。だから俺が負けそうになったときはココが俺のことを助けてくれ】


そして、俺はココを助けなかった。



ココは能力を発動できなかった。


ココとオクトパスは互いを力一杯切り裂きあった。互いの憎しみをぶつけ合う。

ココは必死で努力した。だけど最後まで能力を発動することができなかった。そして、“無能力の状態のまま通常の斬撃のみ”でオクトパスの攻撃を上回った。


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