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この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜  作者: 大和田大和
第五巻 LGBTの世界
210/260

成長

「もう逃さないぞ! オクトパス!」

ココが叫んだ。もう以前の弱々しい彼などいない。

オクトパスは俺たちを待ち構えていた。

「お前がオクトパスだったんだな」

俺は彼との初対面を思い出した。


【ここか! っていうか俺はてっきり人間のいらなくなった乳歯とかを組み合わせてそこに住んでいるのかと思ったよ】

【どなたかの?】

中から出てきたのは、ヨボヨボの爺さんだった。体は痩せ細り、骨に直接肌が張り付いている様にしか見えない。顎はガリガリに痩せていて、髑髏と喋っている様な気になる。怖い。


オクトパスの正体は歯に住んでいる変な爺さんだった。なんの捻りもなくただの第一容疑者が犯人だったのだ。

そういえば、“クロコダイルを差別主義者オクトパスだと思う”とか言って誘導しようとしていたな。


【この辺りに、差別主義者のオクトパスってやつがいるという噂を聞いたのですが、何か心当たりはありませんか?】

【差別主義者?】

【ええ。性的少数派の人を襲う悪いやつなんです。何か心当たりは?】

【ううむ。ないのう。そういえば、“花に住んでいるお嬢さん”は差別をよくしていたの】



オクトパスは隠すことなく、

「いかにも! このワシが差別主義者のオクトパスじゃ!」

「お前は変身能力を持っている。その力を使ってココの家の生体認証をパスしたんだろ?」

「はて……なんの話かの?」

オクトパスは首を傾げる。

(この野郎。とぼけやがって!)

「お前を逮捕する。大人しく捕まれ!」

俺は水の剣を精製。

そんな俺に、オクトパスは、

「……断る!」

そして、エルジービーティーの世界での最後の戦いが始まった。


まず、一番最初に、ココが飛び出た。

「僕がやる!」

「わかった」

「修行の成果を見せてやる! ケンたちは手を出さないで!」

「何っ?」

「僕がここで一人で勝たないと、永遠に強くなれないような気がするんだ! 僕がケリをつける! これは…… 私の戦いだっ!」

「わかった。だけど危なくなったら加勢する」

ココは走りながら――

「花よ! 食い尽くせ!」

花の力を使おうとした。だが、何も出なかった。

「なんじゃ? まだ修行中なのか? そんなんでどうやってわしに勝つ? 男のくせに情けないやつめ!」

オクトパスは、差別発言をしつつ、

「虹よ! 砕け散れ!」

背中から八本の足を生み出した。虹色に輝くタコ足は、捻れながら手をこまねく。まるで、性的少数派の象徴である“虹”を蔑んでいるかのようだ。

「私は女だ! 修行の成果を見せてやる!」

ココは通常の長剣を腰から抜き、オクトパスに切り掛かった。銀の鈍色が水面をその身に映す。水面も同様に銀の剣の腹を反射する。二つの物質は、まるで合わせ鏡のように、虚像を撃ち合う。

「私は誰よりも努力したんだっ! 男よりも女よりも!」

オクトパスはココの努力を絡み合う腕で無慈悲に払う。

ココは怯むことなく果敢に挑む。

「私はいつも差別されてきた! いつも自分の努力と関係がない部分でひどいことを言われてきた!」

ココの斬撃がタコを飲むようにして襲う。一本目の足が切り落とされた。

「いつも私には価値がないように思えていた! だけど違う! 価値がないのはお前たちだ!」

ココは、まるでタコを食い殺そうとするワニのようだ。二本目の足が切り落とされた。

「お前たち差別主義者は、誰かを下に見ないと理性を保てないんだ! 少数派の人間を見下し続けるのは、自分に自信がないことの裏返しだっ!」

ココはさらに激しく剣を舞いつける。三本目の足が切り落とされた。

「私の体は男だ! だけど心は女だ! だけどそれの何が悪い!」

ココの攻撃は火を纏いながら踊っているように激しい。四本目の足が切り落とされた。

「“私の性別”と、“お前の人生”になんの関係があるっ!」

ココは怒りの炎を剣に乗せて、吐き出す。五本目の足が切り落とされた。残り三本。

「お前が私を否定するように、私もお前のことを否定するっ!」

ココは怨嗟を剣に流し込む。剣の皮下で鋼が溶けて、怒りが花を咲かせているみたいだ。

オクトパスは、たまらずココから距離を取る。

「くそっ! 能力を開花させていない若造に、このわしが圧されるとは……!」

「お前のような“他人を見下さないと生きていけない弱い人間”には、負けない!」

ココは右手の剣をさらに激しく輝かせる。


戦いを見守るアリシアが、

「アレって何をしようとしているの?」


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