表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜  作者: 大和田大和
第五巻 LGBTの世界
204/260

ダブルトラップ

俺は空中から滑り落ちるようにして、首筋を狙い撃つ。音もなく、風もなく、ただ閃光のように一瞬だけ力を放てばいい。限界まで力を抜いて、極限までリラックス。力を込めるのは、首を切断する一瞬だけ!

ティラノサウルスは俺の水分身にかじりついた。パシャリという音がして囮はその役目を終えた。

「な、なんだ? 罠か?」

ティラノサウルスは罠に気づいた。だけどもう遅い!

「もらった!」

そして、俺の渾身の一撃が巨大な恐竜の首を切り落とした。


大きな音とともに、恐竜の頭部は地面にキスをした。

「これで事件は解決だな」

すると、恐竜の体は弱々しく脈打ち始めた。プルプル震えて縮んでいく。きっと変身が解けるのだろう。

そして、オクトパスの変身は解けた。俺はそれを見て――

「しまった。罠だ」

俺は“罠にはめられていたのが自分だ”ということにようやく気づいた。だが気づいた時にはもう遅かった。



[同時刻 アリシア視点]

私は、“オクトパスを追っていったケン”を追った。だけどなぜか彼とは合流することができなかった。その代わりオクトパスを発見し、戦った。結果は私の勝利だった。ここまではよかった。だけど――

私は殺したオクトパスを見つめた。

「これってどういうこと? まさか罠?」

私は頭の中で思惑した。考えを癌のように脳裏に張り巡らせる。

「だからケンがどこにもいなかったのね。ケンも罠にはめられていたんだ! だとしたらココちゃんが危ない!」

私は踵を引き返す。


間に合って! お願い!


そんな願いはただの自分を誤魔化すためのもの。不安な心を押し込むためだけの文句。祈っても願っても結果が変わるはずなどないのに……



[ケン視点]

森の中を走る。走ってきた道をまっすぐに戻っていく。木の葉を踏み抜き、枝を砕いて矢のように進む。すると、前方にアリシアがいるのが見えた。

「アリシアっ!」

アリシアは振り返り、俺に向かって剣を抜いた。

(やはりな)

「止まって! 本物のケンだっていう証拠を見せて!」

「俺とアリシアが初めて会った時に、遭遇したモンスターはテッポウナギ。俺の正体はアリシアの“見えない友達”。俺が能力の限界を超えた時のパワーワードは“私たち友達でしょ?”だ。お前も何か証拠を見せてくれ!」

「わかったわ。私の好物はちくわだんご。好きな飲み物は美味しいもの。そして、ケンが大事にしていた高級クッキーをこっそり食べたのは私よ!」

アリシアは大真面目な顔で言った。

「…………」

「どうしたの? もしやあなた偽物?」

俺はアリシアに近寄ると、頬をむぎゅーと引っ張った。

「それじゃ本物のアリシアだっていう証拠にならないだろー! っていうかお前が俺のクッキー食ったのか!」

「いはいいはいいはい! やめへー!」

「というかこのバカさ加減が本物の証拠だな……」

俺は頬から手を離した。

「アリシアの方のオクトパスも囮だったか?」

「ええ。殺したら、変身が解けてタコの足になったわ」

俺たちは、オクトパスの罠にまんまと騙された。足だけをちぎって囮にしてやがったのだ。

「「ココが危ない!」」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ