自殺
「よし!」
俺はベッドから起きた。横のベッドを見るとココはまだ寝ている。あれだけボコボコにされたんだそっとしておこう。
クロコダイルに勝ちたい。先の戦いでわかったのは、あいつは“ブラックワード”というものを使っていること。それとクロコダイルとは薬物の名前で、おそらくあいつはそれを日常的に服用している。
俺は書斎に行くとココの本を片っ端から調べた。
『エルジービーティーの歴史』『自分を変えるには』『ゲイのためのゲイによる本』『理想的な人間関係』『植物図鑑』『ガソリンの種類』『ゴートゥーパスト〜過去への旅路〜』『自分らしくいるには』『枝分かれする未来図』『秋の草花』『国の成り立ち』『人を傷つける言葉』『野鳥図鑑』『メイクで変身』『性転換の危険性』『勇気を持つには〜自分に自信を持つ十のステップ〜』『市販の薬図鑑』『友人の作りかた』『自信がない人が読む本』『火事の時の対処法』『地震の時、身を守る方法』
ココの書斎には多種多様な本があった。特に自己啓発の本が多い。いいことだ。弱い自分が嫌で変えようと頑張っている。
自分の弱さや弱点を意地でも認めない人もいるが、そのほうがみっともない。自分は運動ができない。勉強ができない。それを認めることこそが第一歩だ。
俺はそんなことを考えながら、本棚の中から一冊の本を取り出した。
「これだ」
本のタイトルは、
『危険な薬物』
その中をめくると、薬物の種類一覧と危険度のページがあった。
薬物名 危険度 依存度(五段階評価)
タバコ 三 三
カフェイン 一 一
アルコール 一 一
大麻 二 二
モルヒネ 三 四
覚醒剤 五 五
コカイン 四 五
ヘロイン 五 四
(数字はフィクションです。正確な数値が気になる人は、ネットで調べてみてください。作者より)
「へー。カフェインやニコチンも薬物の一種なんだ。知らなかった」
俺はそのままページをめくる。
「クロコダイル。クロコダイル。クロコダイル。ないな。マイナーな薬物なのか?」
そして、そのまま本のページをパラつかせた。
「お! あった」
『最も危険な薬物』のページにその名前はあった。
クロコダイル。別名“合成デソモルヒネ”
モルヒネの一種。安価な材料で誰でも手軽に作れるためエルジービーティーの国などで大流行した過去がある。
使用材料にはガソリンが使われている。
強い快楽を得ることができるが、非常に危険。
「ひええー! ガソリンが材料なのか? そんなもん人体に注入するとかこわっ!」
俺はページに視線を戻す。
使用を続けると、他の薬物同様依存する。しかし、副作用が他の薬物と比にならない。
皮膚が内側から破裂し、目も当てられないほど悲惨な状態になる。
こうなると完治することはできない。
使用するのも、使用者に近づくことも絶対にすべきではない。
使ったら最後、死ぬまで後遺症に付き纏われる。
(この設定も一部フィクションです。作者より)
「使ったら最後か。なんでこんなもん使う人がいるんだ? 信じられない!」
薬物なんて使ったらおしまいだろ。脳が壊れて服用を止めることができなくなる。
「クロコダイルって女の弱点は分からなかったな。っていうか危険ドラッグを使っているならほっとけば勝手に自滅すんじゃね?」
俺は頭をポリポリかきながらベッドに戻った。
すると、ココが首を吊って自殺していた。