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この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜  作者: 大和田大和
第五巻 LGBTの世界
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意味不明

脳裏に広がったのは“痛み”ではなく“快感”だった。黒いモヤに触れた瞬間、頭の中に強烈な快感が花を咲かせた。火花を散らしながら快楽中枢を舐め尽くす。


体がプルプルと震え始め、足腰に力が入らなくなった。

腰が抜けたみたいだ。


「どぅだ? キ持ちぃいだろぅ?」

クロコダイルの声は、歪んで聞こえてくる。頭がガンガンする。

五感がまともに機能していない。四肢に痺れにも似た快感が走る。


頭の中には、花畑が広がった。大きく息を吸い込むと、胸いっぱいに花の香りがした。

おいしい空気は、今が戦闘中だということを忘れさせてくれる。


体がジンジンと火照ってくる。手や足に熱が籠る。ふつふつと何かが沸騰しそうだ。

肌の下で体液が煮え滾っているのを感じる。


気持ちがいい。気持ちがいい。気持ちがいい。

何だこの気持ち? これは一体何の攻撃だ?


脳が電子レンジでチンされたみたいになった。フワトロになって、液体がこぼれそうだ。


目眩がする。吐き気がする。だけどそれが気持ちいい。


まるで寝る直前のあの天にも登るような感覚によく似ている。頭では、動かないといけないとわかっているのに行動できない。

「オラっ!」

ドカっ! 鈍い音とともに俺は蹴り飛ばされた。



鈍痛が頭の中に眩い火花を散らす。だけどそれも一瞬。すぐにまた快楽の波に襲われた。

体からの危険信号(痛覚)をはっきりと感じている。だけど快楽がそれを無視させる。



パワーワードで痛みを無視するときとは違う。何か人工的なものを注入されたみたいだ。

俺は揺れる頭を必死で動かした。快楽に争い、気を引き締める。


「これはドラッグか?」

必死で押し出した声は、弱々しくて儚い。


「そぅだ。気持ちよかつただろ?」

耳がだんだんはっきりしてきた。俺は体勢を何とか立て直した。


「なにをした?」

「デソモルヒネって言ってな。モルヒネの一種だ。強い快楽作用があって、人間の意識を混濁させる」


俺は頭を左右に激しく降って、視界を矯正する。神経を集中させてドラゴンナイトに変身しようとするができない。こんな状態ではそんな体力などない。


力を振り絞って水の剣を生み出す。こいつはココをボロボロになるまで痛めつけた。


あのときの光景を思い出せ。怒りを俺の体の原動力にするんだ!

「くそっ!」


俺は飛び上がって切りつけた。だが、あっさりと黒い雲によってはじき飛ばされた。

俺は無様に床を転がった。


(ダメだ! 体が朦朧とする)

クロコダイルの方を見ると、黒いモヤをさらに発生させていた。


モヤは床をずるずると這いずるようにしてこちらに向かってくる。

空気よりも重たい気体が、床の上を走っているみたいだ。


「よせっ! やめろっ!」

そして、黒いモヤはあっという間に俺の体を包んで隠した。モヤの球体の中で、俺の体に大量の薬物が流し込まれた。


刺すような快楽が脳髄を侵す。だがそれと同時に、同じくらい強烈な痛みも伴い出した。

おそらく体が薬物の過剰摂取により拒否反応を起こしているのだろう。



手の痺れ、目眩、吐き気、痛み、痙攣、頭痛、嗚咽、そして、快感。



様々な反応が俺の脳の中で運動会を始めた。混線する電気信号は、弾けるようにして脳内を跳ね回る。

その時だった。誰かが俺の体を弄る。モヤの中に手を突っ込んで俺を助け出そうとしている。


「誰だ? アリシアか?」

いや、アリシアじゃない。何となくだが違う気がする。

「ゴリアテ?」

返事はない。


「ココか?」

その瞬間、俺は快楽の黒雲から引きずり出された。



俺を闇から助け出したのは、最も意外な人物だった。

「大丈夫? 誰がこんなひどいことを?」

その人物は俺を助け出すと、黒いガスを消し去った。


「しっかりして! 私の声が聞こえる?」

その人物は俺に力強く語りかける。



「きっと大丈夫だから! 私が助けてあげるから!」

俺を助けてくれたのは、俺を傷つけた張本人“クロコダイル”だった。


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