突入
「ここがおかま屋さんでしゅ!」
おかま家は一見するとただの薬局にしか見えない。どこにでもあるような普通の薬局。
「まさか中に入った途端に全身をおかまに改造されたりしないよな?」
その瞬間、水を打ったように静まりかえった。不気味な沈黙が俺の体躯を押しつぶす。
「えっ? マジで? 俺おかまのことは尊重できるけど、自分がおかまになるつもりはないよ?」
俺は少数派を尊重できる。誰が誰を愛そうと自由だし、どんな格好をしても本人の勝手だ。
だけど、俺はストレート。女の格好はしたくない。
ゴリアテは、急に遠い目で空を見つめ始めた。
「今日はいい天気でしゅね」
悟ったように空の彼方を瞳で探る。
「え? 急に天気の話になるの? ココもなんか言ってよ」
「今まで……楽しかったな」
ココは地べたを食い入るようにして見ている。悟りでも開いたかのようだ。
「なんでそんな最終回みたいなこと言うの?」
「さよならケン」
「アリシアは絶対に悪ノリしているだけだろ! 俺絶対にこの店に入らないからな!」
逃げようとした瞬間、首根っこをゴリアテに掴まれた。
戦車のような巨体から万力のような力が込められる。
「さ! 新しい世界にようこそ」
「やめろおおおおおお!」
そして、俺はおかま屋さんに入っていった。




