おかま屋さんへ行こう
街の中をのんびりと歩く。時の流れは、ゆらゆらと背後に飛んでいく。
いつもは忙しなく流れる時の濁流もこの時だけはゆっくりと進んでくれた。
淡い色をした空は、風を食い尽くした。雲ひとつない空がやけに曇って見えた。
風が俺たちの体の隙間を縫う。それは洗われるような感覚だった。
「私と……遊んでくれてありがとう……」
と、ココ。前髪に隠れた見えない瞳が笑っているような気がした。
「お礼なんて言うなよ! 友達だろ!」
今度は、ココはこくこくとうなずいてくれた。
「私にはちゃんと感謝して! もっとたくさんお礼を言っていいわよ!」
「こういうのは、お礼を求めない方がかっこいいんだよ!」
「それを言ったら意味がないじゃない! ケンはおばかさんかしら?」
「おめーにだけは言われたくねーよ!」
「ふふっ……」
ココは嬉しそうに笑った。口元に実った笑顔の果実は、甘い匂いを放つ。
「あれ! 今、ココ笑ったか?」
ココは首を横にフルフルと振る。
「いいえ! 今、絶対にニコってした!」
ココは照れ臭いのか首を横に振る。
「ココも笑ったことだし、そろそろ“この国にしかない変な店”に案内してもらおうぜ!」
「どういうこと? ココちゃんが笑ったことと関係ある?」
「細かいところはいいんだよ! ココも俺たちにこの国をもっとよく知って欲しいよな!」
ココは首を横にフルフルと振る。
「なんでだよっ!」
「じゃ、じゃあゴリアテに案内してもらおう」
「この国にしかない変な店でしゅか。ならおかま屋さんにでも行ってみまちょうか!」
「「おかま屋さん?」」
聴き慣れない単語に、耳が驚いた。
俺たちはゴリアテの案内でおかま屋さんについた。




