一閃
その瞬間、意味深な沈黙が流れる。そして、
「…………竜王を倒したって噂だからね。それより、今すぐにココからの依頼をキャンセルしろ!」
「どうしてだ?」
「いいからそうしろっ!」
「断る! なんで差別主義者を探されたくないんだ? お前差別主義を庇っているのか?
それともお前がその差別主義のクソ野郎なのか?」
俺は負けじと言い返した。すると、勝ち目はないと悟ったのか――
「チッ! 行くよ! お前たち」
そして、クロコダイルは颯爽と店から去っていった。
「ケン。あんたよくあんなおっかない人と喧嘩できるわね?」
アリシアはカエルみたいに縮こまってビビっている。
「お兄ちゃん。よくクロコダイルさんと口喧嘩なんてできましゅね。うう怖かったでちゅ。ブルブル」
と、魔法少女ゴリアテ。いや、お前の方がいかついだろ。
「ケン……庇ってくれてありがとう……」
「いや、ココは大事な依頼人だからな。それにしてもなんなんだよ! さっきのクロコダイルってやつは?」
俺は褒められて内心、天狗になっていた。だからカッコつけて、俺はテーブルを右手で叩いた。
かっこいいかなこれ? 友達のために怒っている男っぽいかな? どうかな?
「クロコダイルさんは……この辺りで一番タチが悪いパワーワード使いです……私みたいにナヨナヨした人のことを今みたいにいじめるんです……」
「どこの国に行ってもああいうクズがいるよな」
「この国では、自分らしくいていい決まりがあるでしゅ。だからああいう人も自然と増えてしまうんでしゅよ」
「ケン。あなたあのむかつく女をぶん殴ってきなさいな!」
「だから、なんでいつも俺に行かせようとするんだよ! おめーが行ってこいよ!」
「いやよ! 怖いもの!」