依頼人登場
「君が依頼人?」
「はい。そうです……」
依頼人は、男性。おかっぱのダークグリーンの髪がすごくダサい。
両目は完全に長い前髪に隠れて見えない。
表情を隠す髪の毛は、まるで仮面のようだ。
大人しそうな地味な服装。顔はすごく中性的で、地味めだ。
声は消え入りそうなほどか細い。女の子の声のように高く、蚊の鳴き声みたいだ。
目線は常に下を向いている。地面に釘付けだ。きっとすごくシャイなのだろう。
全身から発生するオーラはまるで火の消えたロウソク。残り火すらないほど大人しい。
存在感もほとんどない。目の前にいるのに見失いそうだ。
「この子が依頼人のココちゃん。でしゅ。体は男性で、中身は女の子でしゅよ」
「そうなんだ。よろしく! ココ! それで依頼内容は?」
ココは俺を無視して、ゴリアテに何か耳打ちした。
「えーと。ココちゃんは、この国に出没する性差別主義者に虐められているらしいでしゅ。
それで、ケンお兄ちゃんにそいつを捕まえて欲しいらしいでしゅ!」
と、ゴリアテ。
「あ。そういうことね。そういうことならこの俺ケンとアリシアに任せてくれ! 絶対にとっ捕まえてきてやるよ!」
ココは再びゴリアテに何か耳打ちした。
「ココちゃんが“ありがとうございます……”って言っているでしゅ」
「あのう。ココは自分では喋らないの? 俺のことは友達だと思ってくれていいぜ?」
ココは首を横にフルフルと振る。
「なんでだよっ!」
友達になるのを断られて、すごく悲しい気持ちになった。
「ケンだっさーい(笑)! 友達になるの断られてるー! はっずかしー!」
と、元祖がちぼっちが煽ってきた。
「うるせっ!」
アリシアはココの方を向いて、
「ココちゃんは私とお友達になりたいのよね? ケンなんて放っておいて私と楽しくおしゃべりしましょう!」
ココは首を横にフルフルと振る。
「おめーも断られているじゃねーかよ(笑)!」
俺は爆笑(笑)した。
「うるさいわねー!」
「っていうかなんでココは俺と直接喋ってくれないんだ?」
ココは一瞬、体をピクッと動かしてから黙り込んだ。じっと地面を見つめて、仁王像のように座っている。
一切動かずに、ただ時が過ぎるのを待っているみたいだ。
五分が経った。依然沈黙のベールは破られない。
十分が経った。思い沈黙が俺たちの体に蓋をする。
十五分が経った。絶望するほどの沈黙が俺たちの体の上を滑る。
「わ、わかった。ココはシャイなんだな。まあ、無理しなくていいからちょっとずつ仲良くなろうか」
ココは首を横にフルフルと振る。
「なんでだよっ!」




