過去に起きた事実
「ドラゴンナイトを殺した? なんの話だ?」
エディフィスは真顔で言った。嘘をついているようには見えない。
「お前が殺したんじゃないのかっ?」
俺は驚きを隠せずに語気を強めて言った。
「いいや。俺は子竜の誘拐しかしていない。この世界では、お前の言う通り、強者に挑まないと成長しないんだ。
殺すメリットなど一切ない。
あの時、俺が事件を起こす前に、もうすでにそいつらは殺されていた。他にも敵がいるのか?」
そして、エディフィスは去っていった。
一体誰があのドラゴンナイトたちを暴虐の限りを尽くして殺したのか、わからないままになってしまった。
[その後、竜王の祭壇にて]
「それじゃあ俺たちはもうそろそろ行くよ」
人間の姿になった竜王は、俺の瞳を見て、
「ああ。またいつでもあたちを殺しにこいよ!」
「お前なんかすぐに超えてやるっ!」
俺の強気な返事を受けて、
「うん! その意気だ!」
竜王はどこか嬉しそうだ。そういえばエディフィスドラゴンと戦っていた時も、少しだけ楽しんでいるように見えた。
「いつか創造主様って人に会えるといいな! ってかなんで俺を創造主様だと勘違いしたんだ?」
「お前の顔が創造主様にそっくりなんだ。雰囲気やしゃべり方は違うが顔は瓜二つよ」
「ふーん。顔がそっくりね」
もしかしたら俺は創造主様の生まれ変わりなのかもしれない。そんな変な考えが脳内を流星のように横切った。
「ケン。いつかお前が創造主様にあたちを会わせてくれる。そんな気がするよ」
「ああ! 絶対に俺が会わせてやる! 約束だ!」
『パワーワードを感知しました。ケンと竜王の能力が上がります』
澄んだ空に、アナウンスが溶ける。
そして綺麗な空模様は、“竜王のかつての思い出”を記憶の海から掘り起こす。どうやら俺の台詞にパワーワードが反応したらしい。
そして、その映像は空のスクリーンに映し出された。
【いやだ。いやだ。いやだ。僕は創造主様のことが大好きなんだ! だから創造主様と一緒にいさせてよ!】
幼い日の竜王は泣きじゃくる。
【いつかまた会えるよ。約束だ】
【そんなの嘘だ!】
竜王は創造主に食ってかかる。角度的に創造主の顔はケンたちには見えない。
【ああ。約束を叶えるのは俺じゃない】
【どういう意味?】
創造主はゆっくりと振り返る。ケンと瓜二つの顔立ちだった。
そして、信じられないことを口にした。まっすぐにケンの顔を指差して、
【約束を叶えるのは、俺じゃない。ケン、お前だ!】
ブツン――そこで映像は消えた。