最後に残る一つのしこり
体がぶっ壊れるくらいの衝撃と共に、俺は投げ飛ばされた。まるで体が光の粒にでもなったのようだ。俺の全身は、あまりのスピードに歪み、光線のように引き伸ばされる。
(ねえ。これ大丈夫? 後遺症とか残らない?)
体がバラバラになりそうになりながら、俺は空に軌道を描いた。地上から見れば、ただのほうき星にしか見えないだろう。
風が熱を持って頬を撫でる。
熱い熱い熱い熱い!
はるか足元に見えている大地は、まるで絵のようだ。あまりの速度と高度で現実感などない。
上を見上げると、星が背後に高速回転しているように見える。一眼レフカメラで長い時間シャッターを開けて撮った写真みたいだ。
光が線のように伸びている。線状になった光の粒は、まるで夜空に住む生き物のようだ。
次々に光が背後に飛んでいく。あまりの速さに速いのか遅いのかわからなくなってきた。速すぎて逆に全ての景色はスローに見えてきた。
そして、
「見つけた!」
俺は反対方向から吹っ飛ばされてくるエディフィスドラゴンを発見した。
「確かこいつを捕まえてくるんだったけ」
「何っ? なんでお前が正面から現れるっ?」
エディフィスは困惑している。そりゃそうだ。
そして俺は、エディフィスドラゴンを捕まえて、惑星を一周して帰ってきた。
「俺にとどめを刺すのか?」
エディフィスドラゴンは第一形態のワイバーンになっていた。もう変身する力すら維持できないほど弱っているのだろう。彼の父親の憑依も解除されていた。
「いや、見逃してやる」
「は?」
「は? じゃあこいつを生かすために俺は世界一周したのか?」
「お前は最後まであたちに挑もうとした。最後の最後まで諦めずに、パワーワードによって能力を向上させた。あれは嘘であってはならない分類のワードだろう。お前は本気であたちに勝とうとしていた」
「だったらなんだっ?」
「また挑みにこい。父親の仇を討つんだろ? いつかできるといいな」
竜王はなんと自分を殺すようにけしかけたのだ。エディフィスは少し驚いた表情になって黙り込んだ。
戦いの後の沈黙は心地の良いものだった。
「なあ。ちょっといいか? エディフィス。お前ドラゴンナイトたちを皆殺しにしただろ?
あれ殺す必要があったのか? この世界だと自分より弱い奴を殺す意味はないんだろ?」
ドラゴンナイトとは、人さらいを調査さしていたドラゴンナイトたちのことを指す。
俺がクリスタルガーデンに着いた時にはもうすでに殺されていた奴らのことだ。
そして、エディフィスは--衝撃的なことを口にした。
「ドラゴンナイトを殺した? ”なんの話だ”?」




