人質は
俺はいくつかの臓器を壊しながら先代竜王を貫いた。
そして、激しい炸裂音とともに、先代の竜王は胸から血を流して倒れた。
この世界では力こそが全て。そして、今この瞬間、俺は先代の竜王を超えた。
敵は最強の第三形態。俺はまだ弱い第二形態のままだった。
もし諦めていたら確実に負けていた。だけど諦めなかったから勝てる“かも”しれなかったのだ。
勝てる“かも”しれない。そんなただの希望的観測は、現実になった。
先代の竜王は胸に大きな穴を開けて、悶えている。
「ぐわーあああ! いてえええー!」、「くそっ! くそったれがあ!」
先代の竜王は最後の力を振り絞って、俺に攻撃し始めた。
巨大な体で俺を押しつぶそうとする。体から生えた戦艦を千切っては投げつける。
皮膚から突き出た重火器から雨のようにミサイルが撃ち込まれる。
隕石のようなパンチが降り注ぐ。
あちこちから剣が突き出た尻尾で薙ぎ払う。
さっきまでは先代の竜王に傷一つつけられなかった。だけど今度は、さっきと逆の結果になった。
それらすべての攻撃では、俺に傷一つつけることすらできなかった。代わりに先代竜王の体が傷ついた。先代竜王は自分の攻撃でダメージを食らっているのだ。
「もう諦めろ。お前は弱い」
俺は冷静に言い放つ。
先代の竜王はなおも攻撃を止めようとしない。
「くそっ! くそっ! くそっ!」、「俺は竜王だ! お前ごとき虫けらに負けることなど許されないっ!」
「この世界では力こそがすべてだ!」
俺は水を軽く先代の竜王にかけた。すると、先代の竜王は吹き飛ばされて地面を無様に転がった。
圧倒的な力の差が、物理法則を無視する。
「クソがああ! こんな雑魚に負けるために一千年も修行したんじゃねーよ!」、「こんなところでまた死んでたまるかあ! もうあれしかない! こうなったら奥の手だー!」
先代の竜王は、ゾッとするような笑みを浮かべた。
「何っ? 奥の手だと?」
「お前は愛や友情がゴミ以下だとは思はないんだよな? さっき言っていたもんな!」、「なら、“人質をとっているこちら”にもう手出しができないってことだな?」
先代の竜王は卑怯者らしく、懐から人質を取り出した。きっと竜王との戦闘に備えて隠していたんだろう。
人質は――




