勝敗は……?
頭がもぎ取れるほどの衝撃が走った。ブルドーザーとブルドーザーがぶつかったみたいだ。
惑星と惑星がぶつかる時のような爆発音と共に俺たちは吹っ飛ばされた。
「ぐわっ!」
「ギャッ!」
反響する衝撃音は、あちこちを楽しそうに飛び回る。
そして、幾度か壁や地面にぶつかると、次第に弱まっていった。
音が消えた凪の海の中で、勝敗は静かについた。
渾身の力を込めた戦いで勝ったのは俺だった。
俺は瓦礫の中でしっかりと両足で立った。
自分の状態を確認した。全身ボロボロで今にも壊れそうだ。
ツノは片方もがれて、腕からは尺骨が飛び出ている。
右拳は完全に潰れて、一目見ただけではこれがなんだったのかわからない。
冷たいジンジンとした感覚だけが残っている。
足と腹からはめまいがするほどの流血が起こっている。だが、俺はまだ生きている。まだ立っている。
腹には敵のメカアームが深々と突き刺さっていた。俺はそれを引き抜く。
「ぐっ!」
電流よりも激しい痛みが全身を駆け巡った。床に、“飛び散ったオイルと血”が絵を描いた。
「勝った」
勝利の後の痛みはどこか心地の良いものだった。静寂と安堵が交じりながら、時のカケラと共に俺の体表を滑っていく。
緩やかな時の流れが、俺の傷を癒してくれる。
勝利の余韻に浸っていると、
「お! いたな。っていうかデカイな。筋肉でできた戦車のようだ」
「いつの間にこんなに大きくなったの? 成長期になったの?」
アリシアとアルが飛んできた。
「お前らどこいってたんだよっ! なんで加勢とかしてくれないの? 殺されそうになったんだけど」
「私たちは子竜を逃していたんだ!」
「そーよ! そーよ! 赤ちゃんたちは殺されたら可哀想でしょう!」
「俺は殺されてもいいみたいな言い方だな」
「ま、いーからいーから。それであのおっかないのは倒したの?」
「ああ! もちろんだ!」
「よかった。これで一件落着だな」
「あー。怖かったわー。ケンに任せて正解だったわね! あ!」
アリシアは思わず本音が出た。
「お前今なんつった?」
「“本当は怖かったらかケンに全部押し付けて隠れていた”なんてことは絶対にないわよ!」
説明ご苦労。後でゲンコツだな。もちろんこのむきむきのドラゴンナイトの姿で!
「ケン。大体の子竜は保護して逃したんだが、“太陽に関してお前に質問していた子竜”だけがいないんだ。見なかったか?」
「ああ。あの元気なやつか。いや見なかったけど。見つからないならこの瓦礫の中から探すしかないな。まあ、竜は子供でも頑丈だから死んではいないだろう」
「えー。私もう疲れたらお家に帰りたいー」
銀竜アリシアが駄々をこねだした。子供か。
「子供ほったらかして帰ったら竜王にチクるからな! 大体なんでそんなに帰りたいんだよ?」




