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この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜  作者: 大和田大和
第四巻 竜の世界
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対流 放射 伝導


そして、ダンジョンの際奥へとたどり着いた。そこには、たくさんの子竜たちがいた。クリスタルの牢屋に放り込まれて、震えている。


「もう大丈夫だぞ! 人さらいなんていなかった! ん? お前はさっきの子竜!」



牢屋の中には、先ほど太陽の仕組みついて質問してきた子竜がいた。その子竜は、俺の瞳をまっすぐにみて、

「なんでお兄ちゃんが人さらいと一緒にいるの? お兄ちゃんも人さらいの味方だったの?」



その瞬間、俺は理解した。俺の隣を歩いていた人物が人さらいなのだ。

「アリシア? アル?」


「うん」

「わかっている」

俺たちはゆっくりと後ろを振り返る。首が九十度右回転する。視界にはゆっくりとクリスタルの壁が写る。そして、背後を振り返った。


「まさか増援が来るなんて思っていなかったよ。ヒャヒャヒャ」

この世界には殺人罪という罪はない。暴行罪も傷害致死もない。そんな法律意味をなさないのだ。


「だけど俺は強いからな。三対一で殺してあげるよ。ヒャヒャヒャヒャ」

殺されても殴られても刺されても、やられた側が罪に問われる。


「お前たち雑魚どもをガキの目の前で殺せば、逃げる気力もなくなるだろ。ヒャヒャっ!」

この世界では弱いことこそが最大の罪。


「さあ始めよう! 竜の世界での戦いを!」

この世界では力が全て。愛などゴミ以下なのだ。勝った方が全てを得ることができる。


「変身っっっっ!」

そして、好青年は醜い竜へと姿を変えた。


勝つことが全て。

最後に勝てば何をしても許される。

力を持っている者だけが存在を許されるのだ。




好青年は醜い竜へと姿を変えた。俺たちは目の前の竜を見て、

「なんだこいつ? こいつ本当に生物なのか?」

人さらいは、竜の姿になった。だけど、それは一見しただけでは竜だと判別することができない。


「全身が武器でできているわね」

人さらいは、武器と竜のハーフになった。

翼は鋼鉄の盾。いくつものシールドを張り合わせて作られている。


尻尾はしなるムチ。ムチからはいくつもの釘やトゲが戦闘的に突き出ている。


頭部は巨大な大砲。六角形の砲口からは火炎が溢れている。これは吐息ということなのだろうか? 


大砲の上には鼻。下には口。付け根には二対の目がついている。まるで巨大な鉄砲がモンスター化したみたいだ。

こいつはワイバーンタイプ(両翼と両足のみで腕がない竜)ではなく両手がついているタイプの竜だ。


右手は血のこびりついたドリル。

左手は、メカアーム。

首や腹にはいくつもの鉄板が層を生み出す。鱗ということなのだろう。乱雑に溶接されていて、ところどころからオイルが滴り落ちている。


背中には一筋のトゲの列。まるで列を成す殺意のようにも見える。アイスピック状の針棘には、人間の目玉のようなものがいくつも突き刺さっている。

全身が全て武器で作られている。誰かを、または何かを殺すため、壊すためだけにこの世に存在している。強さが全てのこの世界を生き抜くための姿なのだろう。


そこには優しさも勇気も暖かさも愛も少しも存在していない。冷たい機械からはドス黒い殺人欲求だけが熱伝導する。

軋む機械から、熱放射によって金属音が伝わる。

仄暗いクリスタルの牢獄の中で、いびつな機械は対流によって影を落とす。


武器の竜は、口を開いた。顔についている砲口が赤く輝く。砲撃を放つつもりだろう。

「殺す」

そして、クリスタルでできたダンジョンは一瞬で汚い瓦礫に変わった。


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