赤ちゃんドラゴン
「私もケン様が逃げた場合は、殺してもいいですか?」
「もちろんです!」
「僕もケン様のことを殺してもいいですか?」
「もちろんです!」
「ケンのこと殺したいです!」
「もちろんです!」
もはや質問コーナーでもなんでもない気がする。普通に各々が個人的に俺のことを殺そうとしていないか?
って言うか最初からずっと思っていたけど、なんでこいつらは俺に直接聞かないでアリシアに聞くんだ?
「僕も質問があります!」
よちよち歩きの金色の子竜が可愛らしく翼を掲げた。挙手ということなのだろう。
「ケン様は竜王様に挑むんですよね?」
「そうよ!」
と、アリシア。
「そんな竜王様に挑むケン様について質問があります。どうして太陽がお空に昇っている時はポカポカ暖かいんですか?」
「?」
アリシアの頭上には目で見えるくらい大きな?マークが見える。
「僕の質問に答えてください! どーしてお昼は夜よりも暖かいんですか?」
「その質問、ケンのことと関係あるかしら?」
大馬鹿アリシアも流石に困惑している。
「わからないです。でも僕、なんでお昼が暖かいかどうしても知りたいんですぅ」
きっとこの子竜は、まだ子供中の子供なんだろう。きっと生後数ヶ月とかそこらだろう。
子竜の不思議な質問に、場はなんだか和やかな雰囲気になった。
「悪いけど、ケン以外のことについては答えられないわ! ごめんなさいね。おうちに帰ってママに聞いてちょうだい」
すると、
「ひっく! グスっ! うぇええーん!」
子竜は泣き出してしまった。
「おい! ちゃんと答えてやれよ!」、「かわいそうだろ!」、「まだこんな子供じゃないか!」、「泣いているじゃないか!」、「そーだ! そーだ!」
野次馬どもが盛り上がる。アリシアはタジタジだ。天罰だ! 俺は内心、笑っていた。
「ええっ。どうしよう。私、ケンが竜王に挑む系の質問にしか答えられないの」
「うえええええん! グスっ! ひっく!」
「おい! ケン様! てめーいい加減にしろよ!」
と、モブ竜。ん? 今、俺に罵倒した?
「まだ子供なんだ! ケン様、質問に答えてやれよ!」
と、別のモブ。え? 俺に言っているの? ってかさっきの罵倒も俺に言っていたの?
「見損なったぞ! ケン!」、「ふざけるなよ! ケン!」、「殺すぞ! ケン!」、「質問に答えろよ! ケン!」、「ケン! ケン! ケン!」
次々に俺に対して怒りをあらわにする竜たち。
「早く答えなさいよ! ケン!」
と、アリシア。
「さっさと答えてやれ! ケン!」
と、アル。
「はあぁ? なんで俺ー? 今の流れでなんで俺になるの?
ずっとアリシアが質疑応答に勝手に答えていたじゃないかっ?
さっきまであんなにイキイキしていたのに! ふざけるなっ!
都合が悪くなった時だけ俺に頼るな! 毎度毎度頭に来るんだよ!
困ったらすぐに俺に頼ってばっかりじゃないか!
俺だって頑張っているのに!
だいたい太陽が地表を温める仕組みなんて俺にわかるわけ」
[八分後]
「以上が“太陽が地表を温める仕組み”の説明だ。わかったか?」
俺はこれでもかと言うほどわかりやすく、太陽の仕組みを解説した。
「わかりましたー! ケン様の話を、専門家の意見を交えつつ要約すると以下のようになります。
“太陽系の全質量の九十九パーセントを占める太陽”は目に見えない小さな粒、電磁波を惑星に向かって飛ばしています。
物質を温めるときには“熱伝導”、“対流”、“熱放射”の三つのうちどれかが使われます。
太陽が行うのは、熱放射です。これにより可視光線を地表に飛ばします。
この時地表では、半分ほどの熱エネルギーが反射され、それが惑星のガスや雲にぶつかってさらに地表を温めます。
これにより地表の温度は太陽によって温められているといえよう」
と、先ほどの子竜が言った。
うん。俺の説明をしっかりと理解してくれたみたいだな。
っていうかこういう流れ前にもあったような気がするな。まあいいか。
そして、質疑応答コーナーを終えて、俺たちは誘拐犯を探すために出発した。
「えっと。誘拐犯がいるのはどこだったっけ?」




