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この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜  作者: 大和田大和
第四巻 竜の世界
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先代の竜王


「闇討ち、待ち伏せ、人質、ドーピング、武器の使用、降伏したふりして襲いかかるなんてのもあったな。本当に卑怯な奴だったよ。現竜王様は、そんな卑怯者を殺して、今の地位についたんだ!」

「“待ち伏せした側”が、“された側”に負けたってことか?」


「そういうことになるね! あの戦いは見事だったよ! 手下に包囲された状態から皆殺しだったんだ!」

「俺はそんな奴と戦ったのか」

なんか急に吐き気がしてきた。さらに、背中に新鮮な魚を放り込まれたような不快感が発生した。



「俺、やっぱり竜王と戦うのはやめ」

俺が言い終わる前に、アリシアが、

「ケンなら絶対に竜王に勝てるわ! 

ケンは絶対に諦めたりなんかしないのよ! 

どんなに絶望的な状況でも立ち向かう勇気を持っているの! 

ケンは、私たち“なん”の頼れるリーダー! 私は信じている、ケンは絶対に竜王に勝つって! 

ね? そうでしょ?」

アリシアは今日一番の爽やかな笑顔を俺に向ける。めちゃくちゃ爽やかで春の陽の光のように暖かい光景だ。



「え? あ、ぅん」

やばい。なにこの状況。勘弁してくれ。もうすでに諦めそうなんだけど。

もう竜王に挑む勇気なんてないのに。


「私はさっき聞いたぞ! ケンは先ほどこう言っていたな、

『俺がお前より弱いのはわかった。勝てる可能性はゼロに近い。だけど、俺が諦める可能性はそれよりもっと低い!』とな! 私は感動した! ケン、お前は私の誇りだ」

アルは号泣しながら、声高く言った。右手で俺の肩をガッチリとつかんでいる。頬からは大粒の涙がボロボロとこぼれていく。


「え? いや、待って。俺やっぱり、」

俺が言い終わる前に、

「私もさっきケンが言っていたことをもう一度言うわね! 

『俺は必ずいつかお前を超える! 覚悟しとけ!』だってー! 超カッコいいわよね! 

顔にはいつになく真面目な表情を貼り付けていたわ! 

普段は目は“あんたどこ見てんの?”ってくらいぼーっとしてんのに、あの時はキリッとしていたわ! 

きっと渾身の決め台詞だったのね? ね? ね? そうでしょ?」

アリシアは俺のセリフを表情とともに完コピした。もはやただの嫌がらせにも見える。って言うかこいつしつこいな。


「いや、そんなことはな」

俺が言い切る前に、

「私もケンの心の声を再現しよう。

ケンは竜王に詰め寄られた時に、心の中で『命をかけられないような腰抜けに用はないってことだな。

どうせここで逃げ腰になったらこの場で殺されるだけだ』と言っていたな? な? な? そうだな?」

アルは、大真面目な顔で俺に詰め寄ってくる。竜王より怖いんだけど。

ってかなんで俺の心の声はアルにもアリシアにもバレバレなんだ? 

心の中でつぶやいている意味が全くないんだが。



「ああ。そうだったな。でも、あの時はピンチになって俺はハイテンションだったからな。今、改めて考えるとやっぱり竜王に挑むのは、」

俺が言い切る前に、

「ケンは本当にかっこいいわ! イケメンよ! あれだけ実力差があっても決して諦めないもの! 

私ケンのこと見直しちゃった!」

と、アリシア。

ひいい。もうやめてくれ。


「ケンは騎士道精神をよく理解している。逃げない。

諦めない。決して降伏しない。そして、有言実行する男だ! 

ケンはなにがあっても絶対に竜王に挑む! 例え死んでも、竜王には挑むんだったな? そうだな?」

と、アル。

え? 俺そんなこと言ったっけ?




と、その時だった。

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