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この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜  作者: 大和田大和
第四巻 竜の世界
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卑怯者の落胤

「最後に一ついいか?」

俺は竜王に歩み寄ると、胸ぐらを掴んで空中に掲げた。


少女の体躯は完全に宙ぶらりんの状態になった。はたから見ると子供を虐待しているようだ。


周囲の竜たちは固唾を飲んで、ガクガク震えはじめた。中には一目散に逃げ出す竜もいた。


でもこの行動は正解のはず。竜王はへりくだる腰抜けや、弱腰の雑魚を相手にしない。この世界のルールでは力こそ全て。体裁や、建前、上下関係なんて必要ない。


「俺は必ずいつかお前を超える! 覚悟しとけ!」

俺はありったけの勇気を言葉に乗せて大声を出した。


「竜王の胸ぐらを掴むバカなんて初めてよ! さ、さっさとあたちを下ろして行きな!」

どうやら俺のことを気に入ってくれたみたいだ。俺は返事の代わりに笑顔を返し祭壇から麓の街に降りた。



道中で、ドラゴンナイトが

「すごいな! 竜王様と戦って死ななかった人なんて初めて見るよ!」


「そ、そうなんだ。っていうかあれは戦った内に入るのか? 俺は手も足も出なかったけど」

ドラゴンナイトとはさっきよりも仲良くなった。この竜も俺のことを気に入ってくれたみたいだ。


「戦った内に入るともさ! だって今までの挑戦者は、決闘開始と同時に即死か、降伏だったもん」


「ひえええ。そんな奴の胸ぐらを掴んだのか、俺は」

「ケン様もいつか強くなったら竜王様に挑んでよ! きっと竜王様も喜ぶから」


「そういうもんなの?」

「うん! 竜王という称号は、自主的には捨てられない。負けるまではずっと竜王だよ」


「でもいつかは竜王様も寿命で死ぬだろ? そしたら」

「いや、それはあり得ないね。竜王様は不老不死なんだ」


「不老不死? それ本当か?」

「うん! 大マジ! 竜王様は不死身だよ! 死なないどころか、傷一つつけられたことすらないよ!」


「そんなに強いのかっ?」

「だから何度も言ったじゃないか! 竜王様には誰も勝てない。なのに、ケン様は果敢にも挑んでいった。だから竜王様が気に入ってくださったんだよ」


「俺は不死身の竜に喧嘩を挑んだのか」

っていうか不死身なのを知っていたら多分すぐ降伏していたぞ。まあ、このことはみんなには黙っとこう。


「ねえ! ケン。あなたもしかして、不死身なのを知っていたらすぐ降伏していたんじゃなーい?」

と、アリシアが急に話に入ってきた。


「そんなわけないだろ! 俺は絶対に諦めない!」

冷や汗が止まらない。


「え? ケン様、諦める可能性があったの? それなら竜王様に殺されちゃうことになるけど」


「ないないない! 絶対にない! 相手が不死身でも絶対に諦めない! ほんと。ほんと」


「“まあ、このことはみんなには黙っとこう”とか思っていないでしょうね!」

こいつ鋭すぎるだろ。ってかなんで俺の揚げ足をとるときはこんないイキイキするんだ?


俺はアリシアの口を塞いでアルの方にどかした。


「それで話は変わるけど、竜王様と先代竜王様の戦いってどんな感じだったの? 現竜王も称号を得るために戦ったんだろ?」


「そりゃーつまらなかったよ。完全に一方的な公開処刑だもん。でも先代の竜王様は卑怯者だったから、すっきりしたよ」

「卑怯者? どんな奴だったんだ?」


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