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この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜  作者: 大和田大和
第四巻 竜の世界
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チャンス?

そして、竜王は目の前まで来ると、しゃがみこみ、俺の頭を撫でた。

「おにーちゃん。思ったよりも千倍弱いね。これだとあたちに傷をつけるのに一千年は努力しなきゃね」

竜王は子供をあしらうように俺の頭を撫で回す。


「今まであたちに挑んできた雑魚の中でも最も弱い。おにーちゃんからは、あたちに触れることすらできないよ? パワーワードを使って逆転も無理! あたちは一言を発する前ににいちゃんを殺せる」


「何が言いたい?」

「おにーちゃんは本当に弱い。最弱。虫けら以下の雑魚よ!」

竜王は俺の頭をひたすら撫でる。竜王からしたら俺なんてガキ同然ってことなんだな。


「だったら何だっ? 俺がお前より弱いのはわかった。勝てる可能性はゼロに近い。だけど、俺が諦める可能性はそれよりもっと低い!」

俺は竜王の腕を勢いよく払いのけた。


「お兄ちゃんの実力だと、一千億回あたちに挑んでも勝てないよ? それでも諦めないの?」

「不可能程度じゃ、俺は諦めない!」


「おにーちゃん立てる?」

「何だよ急に?」

「あたちは立てるかどうか聞いたんだよ? 質問に答えて」

俺は足に力を入れてみた。だが動かない。


「無理だ。両足とも骨が壊れている」

「なら無理じゃないね。さっさと立って!」

その瞬間、俺の体の怪我が完治した。


俺は立ち上がり、

「パワーワードで治してくれたのか?」

「うん! おにーちゃんのこと気に入った!」

竜王は満面の笑みになった。先ほどの下卑た笑みは消えて失せた。


「どういうことだ? 力が全てなんだろ? なのに弱い俺を気に入った?」

「うん! おにーちゃんは今まであたちに歯向かってきた生物の中で最も弱かった。こんなに弱いやつ初めてみたわ! でも、これだけ実力差があるのに諦めなかったのもおにーちゃんが初めてだよ!」

その瞬間、俺の心に晴れやかな風が通った。竜王に気に入られた。これなら交渉がうまくいくかもしれない。


「なら俺たちと同盟を結んでくれるか?」


「でも、ハイデルキアとの同盟は却下ね。そこまであたちの心を動かせなかった。その代わりにチャンスをあげるわ!」


「チャンス?」


「ええ! あたちはこの通り忙しい」

竜王は俺の背後を指差した。俺が振り返ると、大小様々な竜たちが一列になって並んでいる。全員竜王に何らかの用事があるのだろう。


「それで?」

「あたちは細かい事件に関わっている暇がないの! 家族が傷つけられでもしない限りここを動けない」

「さっき街で俺と会っただろ? 飴玉あげた時」

「あれはあたちの家族をいじめた奴を殺した直後よ! 揚げ足とってないであたちの話を聞け! 今、この国では小竜の誘拐事件が起こっている。だからおにーちゃんがその犯人を捕獲してきて!」


「そしたらハイデルキアと同盟を結んでくれるのか?」

「うん! いいよ!」

「わかった! その条件に乗った!」


「ただし、失敗したらおにーちゃんは当然殺す。おにーちゃんの連れのおねーちゃん達も目の前で殺す。いいね?」

命をかけられないような腰抜けに用はないってことだな。どうせここで逃げ腰になったらこの場で殺されるだけだ。


「ああ!」

竜王は俺の返事を聞くと、もっと笑顔になった。そして、

「わかったらさっさと行きな」



「最後に一ついいか?」


俺は竜王に歩み寄ると、胸ぐらを掴んで空中に掲げた。


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