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この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜  作者: 大和田大和
第四巻 竜の世界
135/260

無様

全身がドロドロに溶かされて液状化している。血液は霧状になって、骨は白い液体に、髪は黒くベタつく何かになっている。


血だまりの中には、液体になった五臓六腑や十二指腸が見える。まるで絵の具を地面にぶちまけたみたいだ。


吐き気を催すような凄惨な絵面は、魂だけになった俺を震え上がらせる。


竜王の能力がわかった。俺たちが竜王の居室に宿泊したとき、空がガラスのように固形化していた。さっきも竜王は、何もない空の上を歩いていた。


竜王の能力は、物質の三態を自在に操る力だ。


気体の空は、固形化してガラスのようになる。

個体の骨は、液状化してスライムのようになる。

液体の血液は、気体になって空気に溶ける。


この力を使って、竜王は今から俺たちを即死させるつもりだ。なんとかしないと、これが現実になってしまう】




そして、予知は終わり、現実に戻る。


俺は膝から崩れ落ちて地べたに右手をついた。

「はあ。はあ」


肺はバクつきながら酸素を不規則に出し入れする。アルとアリシアもそんな感じだった。きっとパワーワード予知を見たのだろう。


俺が視線を上げると、竜王は指パッチンの手前の姿勢で止まっていた。

「どうした? 予知で嫌なものが見えたか?」

竜王は、少女の顔でにやけ笑いを浮かべている。


「くそっ!」

ここで取るべき選択は何だ? このままじゃ百パーセント負ける。確実に殺されてしまう。

竜王の性格、この国のルール。今の俺の実力。全部の情報を使え! そうでないとハイデルキアは終わりだ。


俺は足に再び力を込める。ガクつく足がふらつく。恐怖でがんじがらめに全身を縛られているみたいだ。恐怖は固形化し、黒い紐となって俺を抱く。

手に、足に、内臓にもいやらしく絡みつく。ねっとりと粘着性を持ちながら俺の体を縛る。


「うおおおおおおおお!」

俺は体の底から大声を出した。身を震わせながら絞り出す。


人が恐怖した時、大声を出す。それは、脳の中にある恐怖神経に信号が行かないようにするため。少しでも恐怖を和らげるために、大声でごまかす。


俺は、右手に剣を構え直す。

「水よっっっ! 燃えさかれっっっ!」

手の中で水が音を立てて燃え上がる。冷たい火炎が右手を濡らし、同時に燃える。


足に力を込める。手に力をねじ込む。脳の中に、ありったけの勇気を送り込む。

「ほう? これだけ実力差があってもまだ向かってくるのか」

竜王は下卑た笑みを浮かべる。


勇気の導火線に火をつける。火花を散らしながら勇気が俺の恐怖を殺す。黒い鎖を弾いて壊す。いつの間にか恐怖はその影を、俺の心から消していた。


「俺は諦めないっ!」

俺は全ての力を右足に込めて、地面を蹴った。空中を飛び上がり、右手に力を込める。水の剣は、青々と輝きながら燃え盛る。かつてこんなにもこの剣が燃えたことなどない。


水の剣に鍔が生えた。十字架のような形状に変化したのだ。目を刺すように激しく青く光る。これが今の俺の最強の攻撃だ。これでダメならもう打つ手がない。


「うおおおおおお! いけえええええ!」

そして、俺の攻撃が竜王に届く手前で、竜王は人差し指と中指だけを俺に向けた。ちょうど手をピストルの形にしたみたいだ。


そして、その二本の指を軽く左に振った。俺はそれだけで空中を吹っ飛ばされて、地面を無様に転がった。

「ぐあっ!」

念動力まで使えるのか。


「くそっ!」

竜王はニコニコしながら俺の元にゆっくりと歩いてくる。このシーンだけ切り取ってみれば、ただの子供にしか見えない。


「俺はまだ諦めていない」

だが心と体の意見は一致しない。体がピクリとも動かないのだ。

そして、竜王は目の前まで来ると、


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