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この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜  作者: 大和田大和
第四巻 竜の世界
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竜王の指パッチン〜パッちん!〜

俺たちはガクつく足を気合いで動かす。動悸と目眩が頭を揺らす。口から心臓と肺が飛び出そうだ。竜王は間違いなく俺が戦った相手の中で最も強い。もしかしたらこの大陸で一番強いのかもしれない。


俺は水分を固めた剣を構える。アルは絵の剣を構える。アリシアも炎の剣を構える。


竜王は小さい右手を俺に向ける。

「ここにちゅーーもーーく!」


「何かする気だ! 気を抜くなよ!」

俺たちは攻撃に備える。どこからどんな攻撃が来てもガードしてやる。


竜王は、爬虫類の瞳で俺を見る。彼女の瞳は、冷静に獲物を捕らえている。その瞳に映るのは恐怖で震えているこの俺だ。


竜王は右手の甲を俺に見せてきた。

「あたちの右手をよーく見ろよ!」

何だ? 何の構えだ? 何をする気だ?


竜王は、

「行くよ!」

と可愛らしい声で言った。俺は全身に警戒を貼り付けて、竜王の右手の甲を見た。何の変哲も無い普通の右手の甲だ。

「今から、お前たちを殺す! せーのっ! さんはいっ!」


そして、竜王は力を込めて指パッチンをした。



パッチン!




【乾いた音が沈黙を引き裂く。その瞬間、俺は空に向かって吸い込まれ始めた。

(何だこれ? どうなっている? 何が起きた?)

俺の体がないのだ。魂だけになって空にゆっくりと浮遊していく。ふわふわと魂が天に昇っていく。


そんな映像が頭の中に浮かんだ。俺はこの映像が何なのかわかる。これはパワーワード予知。数ある未来の中から最も起こってほしくないものを見せてくれる。


ということは、今、実際に魂だけになって空を飛んでいるわけではないのだ。


俺は、もう一度映像をよく確かめる。俺の魂はヘリウムでパンパンになった風船のようだ。風に揺られながら空を泳ぐ。下を見ると、俺たちがさっきいた場所には、黒いシミができていた。


(何だあれ?)

間違いなく俺たちがいた箇所の地面に三つの汚らしいシミがある。俺はそのシミをもっとよく見た。


(あれ。俺の体か?)


地面にぶちまけられている汚れは、俺の体の残骸だった。


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