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この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜  作者: 大和田大和
第四巻 竜の世界
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クリスタルに吸い込まれる

俺の体が風の塊にぶつかる。いくつもの空気の層をこの身が切る。切断されてバラバラになった空気は、ちぎられ、殺され、風になる。


鱗の上を冷たい感触が滑る。まるで風が手で俺に触れているみたいだ。身体中を空気で包まれている。

「すっげえええええ!」

俺は人生で初めて空を飛んだ。空を壊すように、縦横無尽に駆け回る。雪が降ったときにテンションが上がった犬みたいだ。


人間は次第に、感覚や感情が薄くなってくる。外から得ることができる刺激に慣れてくるからだ。

大人の大半は、雪が降ると煩わしいと感じるだけだ。子供の時はあれだけ喜んでいたのに。


今の俺は、生まれて初めて雪に触れる子供そのものだった。普通の人なら胸の中に子供時代の思い出が溢れかえるだろう。

だが、俺には幼少期の思い出などない。俺は、アリシアに生み出された存在だからだ。


だけど、人生で初めて雪を見るのってこんな感じなのかなって思う。


その感情は、いくら歳を取っても色あせない大切なものなのかもしれない。




俺は空中を走りながら、竜の世界を見渡した。ここはおそらくオオカミ大陸の遥か上空。

ずっと下の方にはオオカミ大陸が見えている。


転移系の能力で、“竜の世界に踏み入れた者”をここにワープさせる仕組みがあるのだろう。


青空には、無数のクリスタルが浮遊している。青くて半透明。俺はそのうちの一つに触れてみた。

「うおっ! これ重力を発生させている!」

翼を近づけると、クリスタルから引力のようなものが発生していることがわかった。

あんまり強くはないが、引っ張られる感覚だけがある。おそらくこれを使って、浮島を作っているんだな。


俺は面白くなってさらに翼でクリスタルを突っつこうとした。

「触るな! 中に引きずり込まれるぞ!」

パスんっ!

誰かに頭を叩かれた。


「いてっ! ん?」

俺のことを叩いたのは、絵で描かれた竜だった。


クレヨンで描かれた竜は、目は赤、翼は黄色、胴体は緑、足は青。ぐにゃぐにゃの線が乱雑に輪郭を生み出している。

「お前アルかっ?」


「そうだ! さっさと竜王のところに向かおう」


「嫌だっ!」


俺はアルも仕事もほっぽらかして、遊ぶことに決めた。


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