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俺様は両親に虐待をし始めた。両親にされたことを全く同じようにやり返した。罵り、存在を否定して、人格を否定する。さも価値がないかのように罵詈雑言を浴びせた。タバコを押し付け、風呂の水で溺れさせた。
全てのルーレットは俺にいい出目をくれた。
俺を助けてくれるような出目は一度も出なかったのに、両親を虐待するときだけは、最高の出目が出続けた。
きっとパワーワードが俺に味方をしてくれたんだ。
最初のうちは激しく抵抗していた。だが、次第に抵抗する気も失せたのだろう。両親は俺様の言いなりになった。
もう何が不幸で幸運なのかわからなくなってきた。両親を虐待することは、幸運なことなのか、不幸なのことなのか。
自分の身を守ることができた、という点では、幸運なことだろう。
だが、真っ当な家庭を知らないことは不幸でもある。
幸運と不幸は表裏一体。ほとんど同義だった。捉え方一つでどうとでもなる。
俺様は幸運の星の元に生まれたのかもしれない。だが同時に、不幸の星の元に生まれたのかもしれない。
運よく才能があるから、“不幸な出来事(虐待)”が起こった。
“不幸な出来事(虐待)”が起こったから、パワーワードによって都合のいい出目しか出なくなった。
俺様の強運は、この国では最強だ。絶対に誰にも負けない。俺様一人よりこの国全体の方が弱い。
俺様は価値のないゴミではない。
虐待されるために生まれてきたんじゃない。
虐げられるために生まれてきたんじゃない。
いじめられるために生まれてきたんじゃない。
傷つけられるために生まれてきたんじゃない。
俺様は殺人鬼。人を殺すために生まれてきた。




