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この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜  作者: 大和田大和
第三巻 公平の世界
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過去

[赤ちゃんの過去]

俺様は生まれつき頭が良かった。成人のそれと変わらないほど、頭がキレた。


生後数週間で言語を理解した。政治的な問題や、倫理や、哲学も完璧に理解できた。


だけど、全ての生物の一生の中で最も重要な要素、運だけがなかった。


人生は不公平だ。もはやどう形容していいのかわからないほど理不尽だ。


どんなに才能があっても、いい個性があっても、運で全てがひっくり返る。


俺様には才能があった。他の誰よりも、どんな人間よりも有能だった。両親なんて俺様の足元にも及ばなかった。両親はあまり運のない人たちだった。才能がなく、ルーレットの出目もいつも悪かった。


すると両親は、俺様の才能を妬み、叱責し始めた。親が子供に嫉妬し始めたんだ。そんなことあるのか? 俺様はそう思った。だけど結構よくあることらしい。


親は子供よりも優れているとでも思っているのだろうか? 


俺様には両親の気持ちが理解できなかった。


両親の叱責は、日に日に強く激しくなっていった。


「誰が産んでやったと思っているんだ!」、「調子に乗るな!」、「子供は親の命令を聞くもんだよ!」、「ちょっと才能があるからっていい気になりやがって!」、「私たちがどれだけ苦労したと思っているんだ!」、「お前は幸運でいいな」、「もっと可愛げのある子が生まれれば良かった」、「別の子供が良かった」


俺様は両親のストレスのはけ口だった。罵られ、叩かれ、殴られ、打たれて、タバコを何度も押し付けられた。


両親はその度にニコニコ笑顔になっていった。すごく幸せそうだった。苦しむ俺様の泣き顔を見て、両親は笑っていた。


俺様は自分を否定されるような汚い言葉で強く賢く成長した。パワーワード(嫉妬の言葉)は弱者を強者に変える。俺様は自分の身を守れるように進化した。喋ることができるようになったのは、この辺りだったかな。


この世界のルールでは、力ではなくルーレットの出目で全てが決まる。最悪の家庭に生まれた俺様の出目は、いつも最高だった。

「不運よ。俺様の出目をいい目にしろ!」


『パワーワードを感知。乳児一四番の能力が上昇します』

俺様に名前なんてなかった。アナウンスには、乳児一四番と呼ばれた。それが俺の名前代わりだった。


パワーワードとルーレットがなければ俺様はとっくに衰弱死していた。だけど、この世界では、運が悪ければ悪いほど、運が良くなる。矛盾を有したままいられるというルールが俺様の命を救ってくれた。



不運だけが俺様の味方だった。


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