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旅立ち

 黒き城が降ってからも、暗雲は引かない。

 ウェーバーの手を取って強い雨の中を走る、

「あっ、アリサちゃん、なんかすごい天気だね」

イリスがそんなのんきなことをいいながら、ずぶ濡れで露店を片付けている。

「イリス!あれ!」

わたしは降りつつある黒き城を指差す。

「うわぁすごいね、勇者様の絵本みたい」

イリスは箱の薬草を片付けながら、黒き城を見ると、のんびりとした口調で応えた。

「やっぱそう思うよね?とりあえず教会の中へ!」

「お店片付けなきゃ」

イリスはあいかわらずのんびりと薬草をまとめている、わたしは強い口調で言った。

「後で!とりあえず避難しなきゃ!」

「じゃあこれだけでも」

イリスは商品の薬草を抱えるだけ抱えるとわたし達と一緒に村の教会にずぶ濡れになりながら懸命に走った。

 教会の中、村中の人がここに逃げ込んでいる、多くの人は有名な勇者の絵本に出てくる魔王城と似ている黒き城に怯えて震えて、泣いている子供もいる。

「どうか温かいお茶をお飲みになって落ち着き下さい、女神様がお守り下さいますよ」

神父様がトレイに乗せたハーブティを配って皆を落ち着かせようとしているけれど、皆はただ口々に絵本の魔王の恐ろしさやひどさを嘆いて、きっと同じようなことがおきるんだ、もう駄目だ、おしまいだ、そんなことばっかり。

「……確かにあの黒き城は本当に絵本の魔王城にそっくりだけど、実際はどうなんだろう?」

こういう時わたしはまず疑ってかかる、昔からある絵本なんて、ほんとうに起こるなんて思えない。確かめもせずに絶望するなんて、非錬金術的じゃない。

「アリサちゃん、そう言われてみれば確かにあの黒き城は魔王なんか住んでいないかもしれない、けれど感じるの、何かよくないことが起きるんじゃないかって。だってあの城のまがまがしさったら……」

そこでイリスはクラっと倒れそうになったので、わたしは彼女を受け止めた。

 それからこの暗さはどうにもならないとして、せめてロイヤルジェルのお城に様子を見に行く人が必要ではって、みんなが言い出して……。

「じゃあ、俺が……」

おずおずとウェーバーが声を挙げた、とっさにわたしも声を挙げる。

「わたしも行く!ねぇ、イリス、ついてきてくれる?」

「……アリサちゃんが言うなら」

イリスもおずおずと頷いて、わたしたちはロイヤルジェルへ、と言っても遠いから、まずは東の川のほとりにある、クリアネス街へと向かった。


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