はじめての夜(後編)
甘い匂い。
イリスの小さな身体がわたしに添い寝するようにまだうとうとと眠っている。
そうだ、昨日二つベッドがあるのに、イリスが慣れない街で眠れないって言いだして、二人でおしゃべりしていたら、イリスが寝ちゃったんだっけ。
「おはよう、イリス」
わたしはイリスを優しく起こす。
「……むにゃ」
くうくう、イリスは寝息まで可愛い。
「今日はロイヤルジェルに向かうから、なるべく早く出ようと思うの」
「……ん、え、アリサちゃん?……あぁそうか、おはよう」
イリスはわたしに甘えていた手を慌てて引いて言った
「おはよう、さぁ、起きよう」
わたしもイリスも着替えだす、ロイヤルジェルへ、最初の目的地はそこだけどどれくらいかかるんだろう?やっぱり馬車が欲しいなぁ。あぁ。
「おはよう」
「おっす」
宿屋のロビーでウェーバーと落ち合った。
「ゆうべはお楽しみでしたね」
宿屋の主人が、気さくに話しかけてきた。あぁ、ウェーバー、やっちゃったなぁ。
「……えぇ、手加減した?」
「したけど、ありゃ駄目だ、もうちょっと攻められるだろう、そこは」
「じゃあ教えてあげてね」
「おぅ!まぁ旅は長い、これからこれから」
エヴァンは目の下に隈を作って、わたしたちに元気なくおはようを言ってきた。
「……っていうか言ってくんない?何気にどころか、チェス凄く強くて、その上一回対戦始めたらしつこいって……」
「あら、ごめんなさい、どう、眠れぬ夜は?」
「……今度は君とがいいなぁ」
ふらふらになりながらキザを言うエヴァンを皆で笑いながら、わたしたちは宿屋を後にした。




