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はじめての夜(前編)

「何驚いてんだよ、あぁ、日帰りできるほど体力に自信あるってか?でももう日も低い、今日はここで泊まった方が体力温存になるぞ」

こともなしげにウェーバーは言いながら歩く、白い壁の綺麗な川辺の街を、露店のお兄さんにホットサンドを勧められて一つ買ってかじりながら、わたし達の体力のことも気にしてくれるのはすごく嬉しいけれど、そういうことじゃなくて……。

「いやぁ、そんな、急に……」

ほらね、エヴァンは『そういう意味』に捕らえたよ。

「……あの、エヴァン」

わたしはなんとかくねくねして照れているエヴァンを何とかツッコもうとした。だってねぇ。

「いやぁ情熱的だなぁ、でもいいよ、そこから始まる恋もあるさ!」

両の手を開いてわたしにハグを求めてくるエヴァンをわたしは軽くいなす、だから違うって。

「……あのね、泊まるって言っても、同じ部屋なのかな……」

エヴァンは全然聞いてくれない、

「そうだね、初めてなのかな?じゃあまずはお互いのことを知るためにもキスから。そして二人で眠れない夜を……」

うーん、エヴァンは目を閉じて自分の世界に入ってしまった、通りがかりの子供がその顔を怪訝な目で見つめる、駄目だ、でもなんとかしないと。

「……え?え?」

イリス、わたしが守ってあげるからね。

「わたしはイリスと同じ部屋」

わたしははっきり言ったつもりだった。でも駄目だった、

「そんな二人がかりで、まぁ頑張るけれど」

あぁもう、てかこの辺、宿屋なのね。

「エヴァンとウェーバーは同じ部屋で、二つ取ればいいよね?」

「おぉ、なんでもいいぞ」

ウェーバーはなんでエヴァンが照れているのかも意に介していないのか明るく言って、エヴァンの手を引いた、当然エヴァンは納得がいかない。

「えぇっ!?二人とも、僕のこと嫌いなの?」

「好きとか嫌いになるほどエヴァンのこと知らないし」

「どろぼうさん……」

「そんなぁ!こんなむさくるしい男と眠れない夜はないよお!」

「むさくるしくて悪かったなぁ」

「……まぁ、ウェーバーは何気にチェス強いから、始めたら眠れないかもだけど」

「そういう意味じゃなくて!ねぇ?」

まだ何か言いたそうなエヴァンの肩を掴んでウェーバーが一つの宿屋に入っていく、わたしは慌ててみんなのお金をとりあえず出しておく、イリスはほっとしたのか、わたしの腕に甘えてきた、わたしはその小さな頭を撫でる。


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