風がさらう前に
嫌なことは見たくない。
君はそう言って、私の前から逃げた。
私はそれを追いかけなかった。
それじゃあ意味がないと感じたから。
私から近付いては、まだ君は――弱いままだから。
君から私に近付いてきてくれることを、私は待つから。
いつまででも待つから。君が強くなるまで、私はここから見守っているから。
君のペースで、ゆっくり、ゆっくりでいいから、強くなってほしい。
そしていつか――私としっかり向き合ってほしい。
しっかり、まっすぐ向き合ってほしい。
私は君と同じだったよ?
私も、受け入れられなかった。受け入れたくなかった。
でも――受け入れた。私はそれを認めた。
だから今度はあなたの番。
あなたの背中を見て私は――。
少し強めの風が私をさらおうとする。
それが少し――くすぐったかった。