表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/19

いきなりの、料理?勝負! その6

第1話 その6です。よろしくお願いします。


「ユウトくん、大丈夫、ユウトくんっ!?」

「あ、天織さん、裸で抱きつくのは、勘弁して……うぅっ」

「なぁ、ユウト。お前さっきから、裸、はだか、って言っとるけど、それは裸やないで」

天王寺くんのその言葉に、僕は一時的に理性を取り戻した。

「こ、これが裸じゃないって、どういう事!?」

「そのノンちゃんも、ウチのユイも、ちゃんと『プルマージ』を着ているんやからな」

「ぷ、プルマージ、って……??」

「近代エンジェル・ディッシュの、大きな転換点の一つや。『衛生面』と『倫理性』を追求して作られた、まさに現代の『天の羽衣』やな」

「カズヤ、それちょっと違う例えな気がするで。ようするにユウくん、これはウチらディッシュ専用の服、みたいなもんなんや」

「服……ちゃんとみんな、服を着ているんだ……」

目の前のユイさんも、僕に抱きついている天織さんも、ちゃんと服を着ていたんだ。

確かに胸の特別なところや、股間とか、一応は見えていない。

某○ークスで作っている素体フィギュアみたいな感じだ。

「なっ、すごいやろ! 更にすごいのは、そのプルマージは『ディッシュ』の特徴である、体温、柔らかさ、体臭、肌触りにはまったく、影響を与えていないんや」

「えっ、それって……」

「着ているようで、着ていない。それがプルマージ最大の特徴なんやで」

結論:結局は大事な処が見えないだけで、全裸状態と大差なし。

その事実に気づいた僕の鼻血は、止まる事はなかった……。

「いや、ダメだ、このままじゃダメだって!!」

これでは僕は、ここに鼻血を出す為だけに来た事になる。

違う、それだけは絶対に違う!!

「あの、天織さん。僕は大丈夫ですから……もう、離れて下さい」

「あっ……う、うん、わかったわ……」

僕は『料理を作る為』に、今ここにいるんだ。

だったら、やるしかない!!

めいっぱいのティッシュ(鼻セレブ)を鼻孔に詰めてから、問いかける。

「てんのーじはん、料理の課題、なんでふか?」

「鼻にティッシュ詰めてると、ヘンな声になるんやな。課題は『中華』や」

「ちゅう……か、ですか……」

盛りつける『皿』はとんでもないのに、料理は結構、普通なんだな。

「ちなみに中華は、ワイのもっとも得意な料理や。ユウトはどうなんや?」

「僕は……得意とか、あんまりないです。中華なら3000以上の料理が作れます」

「さっ、3000やて!? それは多すぎや! 『中華街の覇王』の異名を持つ、秋川ジンにも匹敵するで!!」

「秋川……それってジンさんかな? 子供の頃、一緒に料理したりしてたかも」

「ゆ、ユウト……お前、誰なんや? ジョーダンやないんか?」

もちろん、冗談じゃない。

僕にとっての『料理』は、空気を吸ったり、歩いたり、小指で耳をほじったりと、普通の日常的な行為と同じレベルだった。

「用意されている食材は、小麦、豚バラ、ピーマン、それと…………うん、料理は決まったよ」

「ユウトくん、本当に大丈夫?」

「はい、大丈夫です……でもちょっと、離れていて下さい、天織さん」

やっぱり裸にしか見えない、意識してしまう。

でもよく考えたら、周りは『ディッシュ』だらけ。

どっちを向いても、限りなく裸に近い女の子が、目に入ってしまうのだ。

「しょうがないよね、もう…………こうなったら、あれしかない!」

僕は素早く、鞄の中から愛用の包丁の一つ『夜叉斬やしゃぎり』を取り出した。

いつ、いかなる時でも、包丁を肌身離さないのは、料理人の基本だ。

(家庭科の調理実習で使ったから、だけど……持ってて良かった)

食材を並べ、キッチンを自分のやりやすいように整えて、準備完了。

「じゃあ……いくよ、夜叉斬っ!!」

「ユウトのヤツ、包丁に名前つけてるなんて、オタクやなぁ……な、ななっ!?」

「大声上げてどうしたんや、カズヤ?」

「こ、コイツ、目を閉じとる!! 完全に目を閉じて、調理を始めやがった!!」


(第1話 その6:おしまい)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ