いきなりの、料理?勝負! その5
第1話 その5です。よろしくお願いします。
「はぁ、はぁ……うぅっ、ぐっ……橋本くんの特訓は、この日の為のものだったのかも……クッ!」
僕は溢れる鼻血を必死に抑えながら、我が盟友の事を考えていた。
『女性免疫ゼロ体質』
橋本くんたちは、僕をそう呼んだ。
女子は嫌いじゃない、好きだ、むしろ大好きだ!
天織さんや紀武さんが、万が一にも「私と付き合って」「私を好きにして」と言ってきたら、喜んでその幸運に流されよう!
普通の女の子だって、ちょっと残念めの女の子だって、告白とかされたら、きっと超嬉しい!
でも、だけど…………僕は、女の子とは多分、付き合えない。
それが自分の運命だと、思い込んでいた。
僕は女子の『女子らしいところ』が、極端に苦手なのだ。
柔らかいといころも、良い匂いがするところも、可愛いところも。
優しいところも、時に自分勝手でわがままなところも、意地っ張りなところも。
可愛い顔も、色っぽいうなじや、脚や、腰や、太股や、お尻や、おっぱいとかとか……みんな「大好き」なのに「大の苦手」なのだ。
人の何倍も照れ屋で、恥ずかしがりで、興奮しやすくて。
今まで同じクラスになった女子たちからは、かなーり引かれていたと思っている。
だから…………だから、である。
橋本くんを筆頭とした『ジェントリー=コープス』のメンバー(構成員:男子6名/全員、女子との交際経験なし)はみんな、僕にとても優しかった。
『どんな男子だっていつか、その日がくれば、女子と付き会える!!』
そんな優しい合い言葉が売りの彼らは、僕の『女子免疫ゼロ体質』を治そうと、必死になってくれた。
自分たちの秘蔵のコレクションを惜しみなく、僕に提供してくれたのだ。数々のエロ漫画、エロ本、エロ動画や18禁エロゲーの名作たち。
『毎日ハメ活!』『実録・淫らなアイドル事務所』『異世界モンスター風俗最前線』……どれも素晴らしくエロい、男を震わせるものばかりだった。
これも全て「僕が将来、女の子と付き合って、彼女になってもらって、あんな事やそんな事ができるようになる」為の特訓であり、試練なのだ。
でも…………。
「ゴメン、本当にゴメン、橋本くん、みんな……僕はまだ全然、変われてないよ。ダメなままだよ」
まさにパラダイス、数え切れない全裸の女子たちの前で、僕は鼻にティッシュ(鼻セレブ)を詰めながら、自己嫌悪するしかできなかった。
「ユウトくん、お願い……プレッシャーに負けないで、頑張って!」
「あっ、天織さん、プレッシャーとか関係なくて、僕は…………おわっ!!」
更なる血の噴水が、辺りを真っ赤に染めていく。
きっと僕を励ますつもりなんだろうけど、更なる追い打ちでしかない。
うぅっ……頼む、全裸で抱きつくのは止めてくれぇ、天織さんっ!!
「ちょ、ちょっとユウトくん、大丈夫? ユウトくん、ユウトくんっ!」
「ああ……なぁカズヤ。ユウくん、気絶してない?」
「ユイ、お前の言う通りや。ユウトのヤツ、もうリタイアかもな」
「そんな、ユウトくん…………ユウトくんっ!!」
だから、お願い……そんなに柔らかなおっぱい、僕に押しつけないで下さい、天織さん……ガクッ。
(第1話 その5 おしまい)