いきなりの、料理?勝負! その3
第1話 その3です。よろしくお願いします。
「ワイか? ワイの名前は天王寺 カズヤ。料理人や! 機嫌の良い時は気楽にカズやんとか呼んでも、殴らんからな」
「ワテか? ウチの名前は紀武 ユイ。可愛い『ディッシュ』やろ? ぜひぜひ、気軽にユイちゃんって呼んでーな!」
「は、はあ……」
いきなり始まった、一方的な自己紹介が終わる。
でも…………この人たち、一体なんなんだ?
「………………」
「………………」
「……そっちの自己紹介、せんのか?」
「えっ?」
「自己紹介には、自己紹介で返すのが、エンジェル・ディッシュ界の、いや、一般社会の礼儀やろ?」
「そ、それは……はい、僕は江戸川 悠斗です。料理担当です。こちらは……」
「……ディッシュの、天織 乃音です」
「カタい、カタすぎや! それに真面目すぎるで!」
「真面目すぎると、料理や盛りつけも、カチカチの、面白味なくなるで?」
僕と天織さんの控えめな自己紹介にも、高速でツッコミが返される。
この人たちもきっと、出場者なんだろうけど……コテだ、コテコテだ。
間違いなく、コテコテの大阪人やっ!!
「ワイには一目でわかったで。アンタら、今日が大会初出場やろ!」
「そ、その通り……です」
「やっぱそっか! さっきからカズヤと2人で、そうやないかって話してたんや。もう緊張しまくりやろ、ノンちゃん?」
「そ、そんなことは……きゃっ!?」
紀武さん、と名乗ったディッシュの女の子は、いきなり天織さんに抱きついた。
「うーん……制服の上からはよくわからんかったけど、なかなか良い体つきやな。上質な肉付きや」
「や、やだ、止めて……ください……あぁ」
「しかしなぁ、惜しむらくは…………ここやねぇ」
「きゃんっ!!」
モロに、おっぱいワシづかみだった。
青少年男子の誰もが「やってみたい!!」と思っても、なかなか実践できないドリームイベントを、あの大阪女はあっけなくやってしまったのだ。
「け、けしからんです! 人のパートナーに、あんなドエロな行為をするのは……けしからんですっ!!」
「なぁ少年、そんなに鼻血をたらしながら言ってたら、説得力ないで」
「うぅっ、いつの間に……」
慌ててハンカチで血を拭っている僕を、おっぱい揉まれ中の天織さんは、何とも微妙な表情で見つめていた。
恥じらっているのか、怒っているのか、呆れているのか……。
「おいおい、この程度で鼻血出すヤツが、ちゃんと『ディッシュアップ』できるんかいな?」
「『ディッシュアップ』って……なんですか?」
「そんな基本的用語も知らんのか。料理の盛りつけや、盛りつけ!」
「も、盛りつけって…………ごくっ」
考えないようにしていたが、これは避けられない現実だった。
女体も……じゃなくて、エンジェル・ディッシュでは、できた料理を盛りつけるのは、お皿ではなく、女の子の身体。
今、大阪女子に絶賛胸揉まれ中の『天織乃音』さん。
僕は彼女の身体に、料理を盛りつけなくてはならないのだ。
不安だ、不安しかない、できる気がしない……。
「特に胸は、おっぱいは大事な『ディシュアップ・スポット』やで。そこに何を盛るかも、採点時の大事なポイントや!」
「ま、マジですか……うぅっ、そっかぁ……」
……ちょっとだけ、喜んでいる僕がいる。
可愛い女の子のおっぱいに、自分の作った料理を盛りつける!!
こんなとんでもイベントを経験した事を、クラスの橋本くん一派に話したら……きっと僕、神認定とかされちゃうかも!?
エロ大臣確定かも、ああ、あんまり嬉しくない……。
「うーん……うーん…………でもキミ、この子のおっぱい、盛りつけかなり難しいと思うよ」
「な、何故……ですか?」
「ぶっちゃけ、あんまり大きくないから。揉んでみればわかると思うけど」
その大阪女の『心なき言葉』に、天織さんは黙り込み、心で泣いた。
そして、僕は……天織さんの『あまり大きくない胸』を揉んでいる自分を想像して、また鮮血してしまった。
「おいおい、また鼻血かいな。まさかと思うけど、お前、自分のディッシュの胸を揉んだ事、ないんか?」
「あ、あああ、あるはず…………ないですっ!!」
「なんやてっ!? そんなヤツがマジで、この大会に出るんか?」
「そ、それを言うなら、アナタは自分のパートナー……ディッシュさんのおっぱい、揉んだんですか!?」
「当たり前や、揉んだも揉んだ、揉みまくりやっ!! 料理人としての常識やでっ!!」
「じょ、常識、だなんて…………」
目の前が、真っ暗になった。
自分にできるはずない、絶対無理っ!!
そう思いながらも、なんだかんだで天織さんのおっぱいを揉んでいる自分を想像してしまい、出血量はますます、増えてしまった……。
(第1話 その3:おしまい)