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いきなりの、料理?勝負! その2

第1話 その3です。よろしくお願いします。

「こ、この会場…………ものすごく、広いんだね、天織さん」

「ユウトくん、ここの広さは、ずっと真上にある東京ドームのグラウンドと、ほぼ同じよ」

野球場のグラウンドなんて、出た事ないからわからないけど、外から見ているよりもずっと広い感じだ。

完全に、圧倒されてしまう。

ただでさえ緊張が昂ぶっていたのに、ますます怖くなってきた。

「……大丈夫、ユウトくん? 顔が青いけど……」

「平気。です……と言いたいけど、ちょっとヤバいかも……」

「そ、そっか…………うん、よかった……」

「へっ??」

ビビリな僕を見て、天織さんは小さく、本当に小さく微笑んだ。

「わたしもね、実は……かなり、緊張してる」

「天織さんも?? だってこういう大会、何度か経験があるんじゃ……?」

「観た事は何度もあったけど、自分が出場するのは……今日が、初めてだから」

「そ、そうなんだ……」

って、という事は僕たち、初出場同士!?

こんな怪しい……というか、想像のつかない大会に、本当に挑戦しないといけないの?

「ゴメン、ユウトくん。本当はわたし、今日は別の料理人と出場するはずだったの。その人は何度か、出場経験があって……」

「そう……で、その人は?」

「エントリー前日に、交通事故に遭ってしまって、入院してしまって……」

「そ、そっか……」

それでも天織さんは一人、この会場にやってきたんだ。

よほど大事な『参加する理由』があるんだろうな……。

「あの……ひょっとして、やっぱり参加辞退したくなった、ユウトくん?」

「…………ううん、大丈夫。何とか頑張るよ」

「で、でも……」

「大丈夫、だから。料理だけは本当に、自信あるからさ」

僕だって目的の為に、それなりの覚悟を持って、ここに潜入した。

この大会に出る事は、僕の目的とはおそらく、関係ない。

しかし天織さんは、僕と同等、あるいはそれ以上の覚悟を持って、この会場に潜入した。

どうしても、この大会に出なければ、ならないはず。

勢いとはいえ、そんな彼女のパートナーになると申し出たのは、僕の方なのだ。

逃げちゃダメだ、やるしかないんだ、男をみせるんだ!!

「……やっぱり、気は重いけどね……」

「ユウトくん、なんて言ったの? よく聞こえないんだけど……」

「が、頑張ります、って言ったんだ。それだけ!」

「そう……本当に、ありがとう。いつかこのお礼はするからね」

そう言って、小さくはにかんだ彼女の笑顔が、十分なお礼だった。

それ以上を望んでしまうと…………くっ、エッチな『お礼』しか浮かばない。

結構真面目だった僕をこんなにしてしまった、クラスメイトの橋本くんをちょっと、呪った。

「じゃあ……ユウトくん。行きましょう、キッチンに」


***


とにかく覚悟だけは決めて、僕と天織さんは、会場の奥へと進んでいく。

料理をする為の大きなキッチンが、所狭しと並べられている。

その横にはこれまた大きな、ステージ? お立ち台? のようなものがあった。

「うーん……これって、なんだろ?」

「ディッシュ=バルコニー。通称『テーブル』よ」

「これが……テーブル??」

「そう。わたしたち『ディッシュ』は、料理の盛り付け時に、ここに乗るの」

お皿を乗せる場所だから、テーブル……という事か。

その話を聞いて、僕はあらためて痛感した。

僕は自分で作った『料理』を『皿』に盛りつけなくてはならない。

そう、天織さんの、身体の上に。

やっぱりこれは、にょた…………いや、考えるのは止めよう、またツッコまれるだけだ。

「でも、その、人に、人の身体に、料理なんて乗っけて、良いんでしょうか?」

「それってどういう事、ユウトくん?」

「べ、別に、頭ごなしに否定するつもりはないんです。これだけ多くの人たちが、大会に参加しているワケだし」

うまく説明しないと、天織さんを不快にさせてしまうかも知れない。

今だって、わずかに不満げな空気が漂ってみえる。

「あの、衛生面っていうか、えっと……ほら、倫理的にどうなのかな、とか……」

「あのなぁ、何を言っとるんや、お前!!」

「へっ!?」

大声で僕にツッコミを入れてきたのは、天織さん……のワケないよな、声が違うし。

それになんか、大阪弁だった気がする。

「そこのガキ、お前だよ、お前! 何をリンリとか、意味不明な事を言っとるんや!」

「す、すみませんっ!!」

思わず声のした方を向いて、深々と頭を下げてしまった。

そしてゆっくりと、頭を上げると…………そこには一組の男女が、その鋭い眼光が、僕をジッと見ていた。

「エンジェル・ディッシュはな、芸術なんや! 『極上の料理』と『極上の女体』が生み出す、至高の芸術なんやっ!!」

「そうやで、そこの坊ちゃん嬢ちゃん、芸術を舐めたらあかんでぇ!」

「そそ、そう……ですか、はい……」

なんだか僕だけじゃなくて、天織さんも一緒に、トラブルに巻き込まれる予感が……。


(第1話 その2:おしまい)


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