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いきなりの、料理?勝負! その7

第1話 その7です。よろしくお願いします。

僕はめいっぱい、まな板に包丁を振り下ろす。

目を閉じていても、食材の位置は完全に把握している。

食材の匂いや、触った感じで、手に取るようにわかった。

(目隠ししての調理なんて、役に立つとは思わなかったけど……収得しておいて良かったかも)

真っ暗闇の中、僕は完全に落ち着いていた。

全てを超越した『無我の領域』に、突入できていた。

「こ、コイツ……信じられん、なんでこんな事ができるんや!?」

「手品やね、マジックやね。もう、信じられんわ」

大阪ペアが、半ば呆れたような、感嘆の声をもらしていた。

そしてそれは、天織さんも同じだった。

「本当に料理が上手かったのね、ユウトくん……しかも、凄腕……」

信じてもらえていなかったのかも、と思うと、ちょっと残念だけど。

でも逆に、パートナーに実力を認めてもらえてもらえるのは、素直に嬉しかった。

「まずは海老シューマイ30個、それとフカヒレ入り水餃子50、白玉入りゴマ団子は30、それと……」

「ユウト……お前、飲茶にする気やな」

天王寺くんには、もうわかってしまったようだ。

この『エンジェル・ディッシュ』の詳細は、まだ僕にはわかっていない。

しかし人の、女の子の身体に料理を乗せる事は確定しているのだ。

だったら、回鍋肉とか麻婆豆腐みたいな熱々料理は、とても選択できない。

「ユウトらしい選択やな……だが飲茶には、欠点もなくはない……」

天王寺くんが、気になる事を言ったような気がした。

だがもう、僕にはこの手を止める事はできなかった。

目を閉じて、最大限の集中で、調理をするしかない。

一度手を止めたら、再びこのスピードを出すのは、困難だろうから。

「……ちょっと待って、ユウトくん!」

「はぁ、はぁ……えっ?」

天織さんの声が、僕のスピードを鈍らせる。

「ど、どうしたの、天織さん? 話なら、後にしてほしいんだけど……」

「シュウマイとゴマ団子は、もう10個ずつあった方が良いと思う。それと調理の最後に、薄味の『葛』も作ってほしいんだけど……」

「料理の、追加と…………葛!?」

彼女の意図が、僕にはすぐにわからなかった。

しかし天王寺くんには、わかったようだ。

「なるほどな、盛りつけのバランスか。そして、葛……それで飲茶の欠点を補うんやな。良いアドバイスや」

「天織さん……もう盛りつけ、考えてくれているの?」

「当たり前やろ! 盛りつけ、ディスプレイの完成図は、最初に考えるべきものやで!」

僕はとりあえず、料理をそれなりの量作って、盛りつけは後から考えれば良いと思っていたのに。

「料理人は、何を作るかより、最初にディスプレイ完成図を思い浮かべるんや。だからみんな、まだ調理を始めてないんやで」

「そ、そうだったんだ……完成図を、先に…………ぶっ!!」

『飲茶を盛られた天織さん(ほぼ全裸)』をリアルに想像して、また出血しかけた。

いかんいかん、今はそんなの、考えちゃダメだ!!

「ユウトくん、大丈夫よ。今日のディスプは、わたしが考えるから」

「だからわたしの言った通りに、量を調整して……お願い」

「天織さん…………うん、わかったよ!!」

『料理』はまだしも『エンジェル・ディッシュ』に関しては、僕は素人

なんだ。

今の僕がすべき事は、パートナーを信じるだけだ。

「はぁはぁ、20個……10個、残りは…………よし、完成っ!!」

「か、完成って…………こ、これは!? マジか、ユウトっ!!」

「すごい……調理開始から、まだ3分しか……こんなの、信じられんわ」

「はぁ、はぁはぁ……できた、ぞ……」


(第1話 その7:おしまい)


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