夢と現実2
はあ、はあ、はあ…。
空一面を黒い雲が覆い尽くす頃、私は知らない道を息を切らしながらよたよたと歩いていた。
『何も無い抜け殻ね。』
母親は父親が自殺してからおかしくなってしまった。 あんなに優しかった母親が何か悪いことでもした?
ううん、ちがう。それじゃあ、兄のせい?ううん、それも違う。兄は完璧でむしろ母親は将来を期待するほどだった。
だとすると…?
「私のせい?」
ひたすら自問自答を繰り返したすえに導き出した答えがこれ。
何も反論は見当たらない。
逆に母親を苦しめるようなことをしたのを思い出す。
「私、父さんみたいな小説家になりたいの!」
「嫌だ!フリーターなんて!小説家にならせて!」
足が勝手に自分に対するいら立ちをばねに走り始めた。
「私、馬鹿だ…!」
なんで今まで気づかなかっただろう。前の私は、母親が小説家の父親みたいにならないようにあえてフリーターを勧めてくれていたのに、振り払っていた。
そんな自分が悔しくて、悔しくて…。
目が何か熱いもの満たされぼやけていく。そして下へと落ちていった。
その瞬間、
「あっ…!」
足がもつれ体ごと地面に倒れる。
ポツッ…ポツッ
運が悪く、真っ暗な空から雨粒が頬の涙と一緒に流れていった。
そして、雨は激しく降り始めた。
体にはもう起きる気力がない。
「母さん、ごめんね。ごめんね。」
かすれた声は届くはずもなくその場で消えていった。
雨がアスファルトをすべて制覇する頃、私の意識はいよいよ遠のいていく。
ああ、ここで終わるんだな。きっと。
「母さん、兄さん、みんな…、さよなら…。」
私は近づいてくる足音などをぼぉっと耳にしながら目を閉じた。
コツ、コツ、コツ…。
「…。」