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空想物語  作者: さきら響
7/14

5話

翌朝。


ベッド脇のアラームがけたたましく奏に響く。


「ん…。朝かぁ…」


隣には、昨日と同じ姿の慧の姿があった。


すぐ真横にある何もかもを許したような無防備な寝顔にドキッとする。


とりあえず起こさないと。


「慧、起きてる?朝だよー」

「…るさい、響く。頭痛くて起きただけだし…」


かなり不機嫌。


不機嫌どころか、いつも以上に寝起きが最悪だ。


不機嫌を通り越している。


いや、原因は昨日のお父さん達か。


「あ、ごめん…。昨日の事覚えてる…?」

「…あー…。覚えてないかも。俺昨日何してた?」


奏は昨日の事を話した。お父さん達に飲まされた事、マリーの沖縄にある別荘へ行こうと誘われた事。


メールを見ると、二人とも休みだったらしく、了承してくれた。


「行ってもいいけど、俺寝てるぞ?それでもいいのか?」

「いいよいいよ!お疲れさま」


と奏は慧の頭を撫でた。


「ったくよ、あのクソジジイ共め、次に会ったら潰してやる…」

「んもー、一応あたしのお父さんでもあるんだからねー?」

「知ってるよ…。俺の義理のお父さんでもあるんだからな…」


奏は微笑んだ。


「あ、マリーに電話かけていい?今日のこと話とかないとさ」

「あぁ、いいよ。終わるまで寝てていい?」

「いいよ?」


すると、慧は奏に寄ってきた。


「なぁ、いっこわがまま聞いてくんね?」

「へっ?わがまま?」

「膝枕してくんね?近くにいて欲しい…」


な、何言ってんの!


奏は顔を真っ赤にしながら、


「う、うんいいよ…」


と恥ずかしそうに言った。


膝枕も未だに慣れない。


照れくさいというか、下からのぞき込む慧の視線と、見下ろす視線がバッチリ合う時がある。


目を見るだけでも恥ずかしいのに、バッチリ合うとか!


もう、考えただけでも恥ずかしい!


「ほ、ほら!おいで?」


そう言うと、慧は擦り寄ってきた。


お前は猫なのか!?


「あのさ…」

「は、はい!?」

「俺、昨日お前のこと抱き枕にしてたよな…?」

「へっ…?な、何のことかなぁー?」


昨日、結局奏は慧の抱き枕になった。


慧が離してくれなかったのである。


「俺さっきまで抱き枕にしてた気がすんだけど…」

「んっ?あたしじゃないよぉー?慧が抱いてたのはぬいぐるみだよぉー?」


と奏は目線をそらしながら弁解した。


自分です、なんて言ったら、何をされるか!


「お前さ…。俺がぬいぐるみ抱いて寝るとか単純にキモイだろ…」

「そ、そうかなぁー?」

「それマリーに聞いてみろよ…」


奏のスマホが着信音を鳴らした。


電話の相手は、マリーだ。


「あ、奏?今日のこと覚えてるー?」

「もちろん、覚えてるよ!あ、マリーにさ、聞きたいことがあるんだけど」


と言うと、「なにー?」とマリーは言った。


「慧がぬいぐるみ持って今日寝てたのね!かわいくない!?」

「ちょっ…!慧がぬいぐるみ持って寝るとか想像できないわ!待って、慧ってそんなことしてるの!?そんな趣味!?」

「えー、かわいいって思っちゃうのあたしだけなのかなぁ」

「はぁ、惚気もいいとこね。あ、じゃあ家で待ってるね!」

「うん、了解!」


惚気、かぁ。


言われてみればたしかにそうなのかもしれない。


「慧、早く行こっ」


と、奏は慧を急かした。


「あのさ、俺安定の二日酔いなんだけど…。起こして…」

「んもー、仕方ないなぁ。ほら、手出して」


手を差しのべると、慧は素直に手をあずけてきた。


奏はグイッと引っ張りあげた。


引っ張りあげた勢いで慧が「うっ」と唸った気もしたが、聞こえないふりをする。


その瞬間、慧がキスをした。


クスッと慧は笑った。


「お前ほんと素直だよな。顔真っ赤」

「~っ!ほ、ほら、早く行くよ!」


グイグイ引っ張る奏に、慧はフラフラしながら引っ張られていった。


マリーの家までは、政がリムジンで送ってくれた。


希望も一緒だ。


なんせ、マリーの提案で、お付きの2人も一緒に行くのだから、行かないわけにはいかない。


希望は助手席、政は運転手、後ろは奏と慧の2人だ。


「なぁ、マジで俺二日酔いで死んでるけどいいのか?」


膝枕をしてもらっている慧は、奏を見上げながら言った。


「大丈夫だよ!それに、あたし早くマリーに会いたいもん!」


急に慧の顔が不機嫌になった。


あ、まずいかも。


「あっそ、なら1人で行けよ。俺家で寝るわ」


あぁ!やってしまった!


「うぅ…。そんな事言わないでよー…。ね?慧も一緒行こ…?着いたらゆっくりさせてあげるから!………ね?」


はぁ、と慧はため息をついた。


「ったく、しゃぁねぇな」

「やったぁ!」


車が止まり、着いたのはマリーの家だ。


「着きましたよ。マリー様がお待ちです」

「ほら、慧着いたって」

「んぁ?…おぅ」


車を降りると、奏ー!と遠くからマリーの声がした。


「あっ!ほら、マリーだよ!」


マリーっ!


奏はマリーに手を振った。


「もー、待ちくたびれたわよ!早く乗って!慧と希望さんも政さんも!」

「お招き頂きありがとうございます、マリー様」


政と希望がいつものように接した。


すると、やだなぁ、とマリーはケラケラ笑った。


「マリー様とかあたしそんな柄じゃないからさ、ふつーに接してよ」

「ですが…。マリー様のお父様と奥様に叱られてしまいますので…」


固いなあ、とマリーはフンと溜息をつきながら言った。


「沖縄かぁ!何年ぶりだろ!」


奏は、声を弾ませた。


「小学校の頃は家族でよく遊びに行ったよね!懐かしいなぁ!」

「小学校以来じゃない?あたしも小学校から行ってない気がする。お父さんの国にはよく行くけど、国内は行かなくなってたなぁ」


そんな会話をしながら、奏、慧、マリーは席についた。


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