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プロローグ
無機質な電子音がただ淡々と響く部屋。
奏はたくさんの機器に繋がれている婚約者に今日も話しかける。
何度も何度も同じ事を話しかける。
学校であったこと、昔話、初めて会った時の事。
ねえ、慧、覚えてる?
あたし達が初めて出会った時のこと。
初めて会ったとき、お互い小さかったんだよね。
初めて会った時から私の許嫁で、婚約者だったよね。
あたしすごく反抗してたんだよ?
楽しい事もいっぱいあったよね。
運動会の時、あなたがアメ拾い競争で顔真っ白にして一番で帰ってきた時は面白かったよ。
いっぱい喧嘩したよね。
本当に些細なこととか、小さい事でたくさん。
ねぇ?
どうしてあなたは帰ってきてくれないの?
どうしてあなたは戻ってきてくれないの?
戻ってきてくれるんでしょ…?
帰ってきてくれるんでしょ…?
またあたしの傍で笑ってくれるんでしょ…?
またあたしの傍で名前呼んでくれるんでしょ…?
答えてよ…。
目を覚ましてよ…。
「慧…!」